生きて、生き延びる為に

「お金と安全、どちらが大切ですか」

はい、お金です。深刻な事故を起こしても国がお金を出してくれるし、
停電するすろぞ〜と言えば経済界は原発再稼働に賛成してくれるし、
減資はしなくてもいいんだもん。

新潟県知事vs東電社長。どうやら対決は長引きそうな予感だ。

『神の棄てた裸体 ─イスラームの夜を歩く─』(石井光太 新潮文庫
読了。

ほとんどの世界で大っぴらに語るのは憚れる性。そのなかでも
厳格な戒律に基づいて生きるイスラム世界の人々の性に焦点
を当てたのが本書。

大きな括りでは「イスラムの性」なのだが、著者がこれまでにも
追って来た底辺で生きる人々のルポルタージュと根っこは同じ。

蔑まれ、虐げられ、それでも生きて、生き延びる為に、彼ら・
彼女らは性を売り物にする。

生きて行く為に路上でゴミ拾いをする兄弟。だが、それだけでは
家族の生活を支えられない。兄は男娼として不足分を稼ぐ。
弟にはこんなことはさせたくない。だが、弟は兄を少しでも
助けようと、兄には内緒で同じように大人の男と姿を消す。

公園で暮らす浮浪児たち。12歳にもならない彼女たちは大人たち
に体を売ることで生き延びる。それは、抱きしめて欲しいから。
どんなに無茶なことをされても、ただ、ぎゅっと抱きして欲しいから
言われるままに体を預ける。

著者がところどころで取材相手に投げかける言葉は浅はかだ。
だが、それは日本という恵まれた場所に生活する者たちの
思いを代弁しているのかもしれない。

次から次へと繰り出されるエピソードは非常に重い。結婚前に
男との逢瀬を繰り返していた娘を、自らの手で葬らなければ
ならなかった父親の話なんて、途中で本を閉じてしまった。

世界の片隅は私たちの道徳や倫理感を超えたところで、
生き抜こうとしている人々がいる。

本書で気になるのはある程度の脚色がなされていることと、
盛り込まれたエピソードがパターン化していることかな。

ただ、一夫多妻という婚姻関係については目からうろこの
部分もあった。

そろそろ石井さんも他の分野を書かないとマンネリ化しそうだな。