守ろうとして守れなかったもの

わおぉ!三浦雄一郎さん、80歳でエベレスト登頂成功〜♪

凄いねぇ。いくつになっても挑戦する姿勢。それも、無理をしないで
というのがいいな。

どうか、無事に下山して帰国して下さい。

『プロメテウスの罠4 徹底究明!福島原発事故の裏側』(朝日新聞特別
報道部 学研)読了。

朝日新聞朝刊連載記事の、書籍化第4弾。

「はい、この地域は危険なので避難地域とします」と事前の連絡もなく
日本政府が決めた自治体だったが、非難出来ずに残った人たちが
いた。

それは心身に障害を抱えた人たちだった。どこだったか失念したが、
お子さんが障害を抱えており、一旦、避難所へ行ったものの周囲の人
へ迷惑をかけるからと危険と知りつつも自宅へもだった人がいた。

本書は避難出来なかった障害を持つ方や高齢者への支援及び
安否確認と、個人情報保護の問題を扱っている。人名か、個人
情報保護か。勿論、大事なのは人名であるのに間違いはないのだが、
それでも悪くすると条例の壁がある。

先般、激しい地吹雪のなかで子供を守って命を落とした父親がいた。
彼の携帯電話の位置情報が、もっと早く消防へ公開されていたら
どうだったのだろう。

原発から北へ200km。遠野市畜産農家が直面した牧草地での
セシウム検出。自衛隊の空中放水と極秘に進められていた東電
社員救出作戦。そして、原発事故への日本政府の対応に不信感
を募らせるアメリカの動き。

本書のなかでも特筆なのは、原発立地自治体である福島県双葉町
の体験だ。町長は高齢者施設で避難を手伝っている時に原発
爆発に遭遇し、「死の灰」を浴びた。

町民の命を守らなくてはいけない。より安全な所へと福島県を飛び
出し、埼玉県への全町避難を決める。役場機能も埼玉県の避難先
へと移した。だが、福島県内には様々な事情で留まることを余儀なく
なれた町民もいた。

「町に捨てられた」。残った町民の心情、町民を守る為に最善を
考えた町長。小さな歯車の狂いは、後々に大きな問題へと発展
する。原発の事故さえなければ、町や人の心が分断されること
もなかったろうにと思うとやるせない。

「この仮設住宅で死んでは駄目だ。私の人生の収束はここでは
できないと強く思っている」

浪江町から仮設住宅へ移った女性は、随想にそう記した。そうだよ、
仮設住宅で収束してはいけない。だが、この言葉を書いた女性は
2012年6月、膵臓癌を患い永眠した。故郷に帰ることなく。

悔しいよな、こんなのって。しかも膵臓癌が見つかった時、東電に
相談したら「既往症じゃないんですか?」と言われたそうだ。

また、「おわりに」に掲載されている飯館の区長のお孫さんへの
思いが切ない。この部分だけでも立ち読みして欲しいっ!