民主党議員必読!「これが政治主導だっ!」

日中国交正常化 田中角栄大平正芳、官僚たちの挑戦』(服部
龍二 中公新書)読了。

それはいきなりだった。台湾とお付き合いをしなさいと言っていた
アメリカなのに、時の大統領ニクソンは中国を電撃訪問。日本と
しては「え?何それ??」だったのだろう。ニクソン・ショックである。

国連では中国を承認する国が続き、アメリカとの関係に機軸を
置く日本としては中国及び台湾との関係を早急に見直さなければ
いけなくなった。

まずは第2次世界大戦以降、断絶状態にある中国との国交を
回復せねばならない。そんな喫緊の課題を抱えた日本の表
舞台にふたりの政治家がタイミングよく登場する。

土建屋からの叩き上げである田中角栄と、大蔵官僚から政治家へ
と転身した大平正芳だ。演説の名手である角さんに対し、言葉は
少ないものの理論家の大平さん。豪放磊落な角さんに対し、緻密で
繊細な大平さん。何もかもが正反対のふたりがタッグを組んで望んだの
が1972年の日中国交正常化だ。

本書はその歴史的な6日間を、当時の関係者へのインタビューや
公開された外交文書を駆使して描いた迫真のドキュメントだ。

これは面白い。角さん・大平さんのふたりの政治家のみならず、
このふたりの意を受けた外務官僚の働きも見逃せない。

角さんと言えば金権政治の権化とのイメージばかりが強いが、
大枠だけを伝え、細部は適材適所に委ね、最終的な責任は
自分が取ると言い切れる政治家だったんだよな。

そして、その角さんの足りない部分を補ったのが大平さんだ。
「ウー、アー」を抜いて文章にすると、この人の話す内容は
歴代総理のなかでも理路整然としているんだよね。

難航する中国側との交渉、中国との国交正常化に伴う台湾の扱い。
まるで小説を読んでいるようにドキドキする。

尚、中国側では周恩来の存在も光っている。でも、その周恩来
同乗した飛行機で爆睡する角さんって…。大平さん、気まずかった
ろうなぁ。

勿論、中国との交渉がすべてこのふたりの政治家だけの功績で
はない。与野党問わず、何人もの政治家が交渉成立の為に
奔走している。

政治家と官僚が、持てる力を発揮した日本の近代史は「政治主導」
とはどういうものかを教えてくれる。民主党のセンセイたちはこの
時代のことをもっと勉強すればよかったのにね。「政治主導」と言い
ながら、民主党がやっていたのはただの官僚いじめだったもの。

おまけ。
すき焼きが好物だった角さんと大平さん。辛めの味付けが好きな
角さん、甘めの味付けが好きな大平さん。ふたりですき焼きを
突く時、お互いが好みの味にしようとして結局食べられない味に
なることが多かったとか。…いい大人が何をしてたんですか。汗。