隠されていた大罪

「昨日はここに悪魔が立っていた」

国連総会で子ブッシュを「悪魔」呼ばわりしたベネズエラチャベス大統領
が亡くなった。

うーん…がんの手術後ベッドで微笑んでいた写真を見たのが先月だった。
退院も近いのかなぁ…と思ったのだが。

貧困層の絶大な支持を得て、中南米の反米のリーダー的存在だった。
これでアメリカの出方が変わって来るのかな。できれば、アメリカの
思惑通りにならぬように願いたいのだが。

カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』(ヴィクトル・ザスラフスキー
 みすず書房)読了。

穴の中に幾重にも折り重なった遺体。初めて見たのはいつだったか。
衝撃的だった。ここに何人が葬られたのか。考えてぞっとした。

独ソ不可侵条約の元、ポーランドナチス・ドイツスターリンソ連
蹂躙された。戦争捕虜としてソ連に連行されたポーランド軍の将校や
知識階級は、いつのまにかどこかへ消えた。

カチンの森。そこへ連行された将校たちは銃殺され、次々と穴の中へ
放り込まれた。

本書では公開されたソ連時代の極秘文書を引用しながら、スターリン
時代からゴルバチョフが正式に謝罪するまでのソ連およびロシア国内
での本事件の隠蔽と、ナチス・ドイツへの責任転換、西側諸国(主に
イギリス)がいかにこの事件を無視して来たかを総括的に論じている。

「あれはドイツの仕業ですよ」。早くから消えたポーランド将校たちの
噂は広がっていた。ソ連当局はその火を消そうと大噓を吐く。

でも、ナチスの仕業であれば装身具から歯の詰め物まで、何もかも
略奪されているはずなのに、発掘された遺体からは階級章はもとより、
身分証明書、家族の写真等が発見されて。

まぬけだな、ソ連ったら。あんまりにも大量に殺し過ぎて、そこまで
手が回らなかったのか。

これはソ連の罪である。そして、ポーランドをまるで人身御供のように
扱った欧州の罪でもある。

全体主義の恐怖。それがひしひしと伝わって来る。尚、遺体発掘時の
写真が豊富に掲載されているので惨たらしい場面が苦手な人は
要注意だ。でも、これが現実に起きたことなのだけどね。