私の異常な愛情 その9

『独裁者プーチン』(名越健郎 文春新書)読了。

「元スパイ」。それだけで充分魅力的なのである。そういう人が
国のトップに立つ。ロシアならではだろう。

ウラジーミル・プーチン。ロシアの国家元首。イタリアの前首相で
あったベルルスコーニも興味深い人物だったが、プーチンの前
ではその影もかすむ。

KGBとは言え、派遣されていたのは旧東ドイツなのでスパイと
しては決して敏腕ではない。そんなプーチンが何故、ロシアの
トップに立つようになったのか。

本書はプーチンの生い立ちから、実力者が逃げ出して人材不足に
陥っていたエリツィン政権末期に表舞台に登場し、大統領1期目から
現在のプーチンの政治までをかなり批判的に取り上げている。

2期目の終盤、憲法改正をせず子飼いのメドベージェフを後継指名
した時から、大統領へ返り咲くのではないかと思っていた。そして、
事はその通りに進んでいる。

しかし、今回の大統領就任に当たっては前回とは異なりかなりの
逆風が吹いた。大統領選前からロシア各地では大規模な反プーチン
キャンペーンが繰り広げられ、支持率も1期目・2期目ほどには
上がっていない。

それでも私はプーチンが好きである。夏になるとメディアで取り上げ
られる「プーチンさんの夏休み」を毎年楽しみにしている。

バタフライで泳ぎ、白馬を駆り、釣りを楽しみ、ボートを漕ぐ。大抵は
上半身裸で、柔道やサンボで鍛えた裸体を晒している。こんな国家
元首、他にはいないぞ。

戦闘機を操縦したと思えば、潜水艦で潜り、レーシングカーを操り、
ピアノを弾いて歌う。なんとまぁ、才能に溢れていることか。

私のパソコンの画像フォルダにはプーチンのいろんな画像が詰め
込まれている。

ソ連邦は崩壊し、民主主義国家になったはずのロシアだが、それは
あくまでも建前だ。プーチン流民主主義は、権力の一極集中である。
勿論、それはプーチンが握っているのだ。

「金儲けするのはいいが、政治には口出しするな」とオリガルヒを
脅し、側近は自身の出身地サンクトペテルブルグ出身者で固める。

ロシアの帝政はロマノフ朝で終焉を迎えたが、プーチンは現代に
甦ったツァーリ(皇帝)である。さぁ、プーチン王朝の終焉を見届け
ようではないか。

尚、本書はロシアとプーチンの政治の流れを知るには最適。笑う
ことのないプーチンだが、柔道の金メダリスト・山下泰裕氏といる
時には満面の笑みを見せるらしい。

う〜ん、これは見てみたい。山下氏の後ろに隠れてこっそりと
覗いてみたいぞ。あ…でも、うっかり目があったらあの眼力で
秒殺されるかもだ。汗。