「不幸」が似合うアイドルだった

沖縄では桜が咲いている。そして、明日は東京でも気温が20℃
まで上がるそうだ。

梅の前に桜が勘違いしてほころびそうだな。でも、来週になったら
また寒くなるらしい。

お願い。冬は冬らしくしてくれ。体調が追いつかないよ〜。

山口百恵 赤と青とイミテーション・ゴールドと』(中川右介
 朝日文庫)読了。

純白のドレスに身を包んだ彼女が、白いマイクをステージにそっと
置いた時に彼女は「伝説」となった。

「わたしのわがままを許してくれてありがとう。幸せになります」

人気アイドルのまま引退したのは山口百恵。映画やテレビ・ドラマ、
CMで共演した俳優・三浦友和の妻になる為に。

彼女が芸能界で活躍したのは僅かに7年半。素人スカウト番組
「スター誕生」への出場から引退までを、年ごとに追ったのが
本書である。

引退前に出版されてベスト・セラーになった本人の筆になる『蒼い時』や
雑誌のインタビュー、伴侶となった三浦友和の著書は勿論、関係者の発
言を、既刊の書籍や雑誌から拾い集めて山口百恵像を浮き彫りにしている。

頭脳警察などを聴いていた背伸びした子供だった私は、ピンクレディや
キャンディーズの歌は歌えないし、振付も出来なかった。しかし、山口百
恵と沢田研二は別格だ。このふたりの歌なら、結構歌える。

映画も、ドラマも「百恵ちゃんが出ているから」との理由で見ていた。
不幸な役柄が多かった。白血病になったり、産まれたばかりの頃に
取り違えられていたり、短距離走のトップ・ランナーだったのに
走れなくなったり、身分違いの恋を反対されたり。

映画「絶唱」を観て、死して花嫁になれた小雪が可哀想でボロボロ
泣いたのを思い出す。

歌手として、女優として。ふたつの面の百恵像を描きながら、その時代の
芸能界の動きも記されている。

存命している関係者もまだまだいるのだが、直接の取材を一切せずに
書くという実験的評伝の手法も面白い。

コアな百恵ファンには物足りないかもしれないが、私のようなミーハー
なファンだった人間にはいい資料だ。

本書を読んで改めて気付いた。百恵ちゃんは引退した時、21歳だった
のだよね。その歳にしてあの存在感。こんなアイドル、もう出て来ない
だろうなぁ。「百恵伝説」は「百恵神話」になりそうだ。