その時、何が起きていたのか

お客様の苦情を聞く。まぁ、おっしゃることは分からんでもない。
自分がお客様の立場だったら、同じように感じるかるかもしれない。

しかし、このお客様、最後がまずかった。

「安倍が総理になるだろう。政治家の関係には伝手があるんだ」

出たよ。トラの威を借る輩だ。こうなると相槌も適当になる。出来る
ことなら「へぇへぇ、そっでかぁ」って言いたいところだ。

こういう苦情の言い方、一番嫌いだ。声の感じからは年配の方だったが、
言ってて恥ずかしくないのかね。私なら恥ずかしくて言えないよ。

天皇の影法師』(猪瀬直樹 中公文庫)読了。

昭和天皇崩御前後の、妙な空気は体験している。連日のご容態
報道、日に何度も行われるバイタル・データの発表。行き過ぎた
自粛ムードはCMの「お元気ですか?」の台詞までを消した。

そして、故小渕恵三が掲げた新しい元号「平成」の文字。

本書では大正天皇崩御の際に起こった東京日日新聞(現・毎日新聞
元号誤報事件が、晩年の森鴎外が執念を見せた「元号考」に繋
がって行く。

元号は光文。東京日日新聞はどこよりも早く新元号を報じた。
しかし、蓋を開けてみると新元号は「昭和」に決まっていた。

世紀の大誤報と言われる事件はいかにして起きたのか。その後の
東京日日新聞社内の対応が詳細に綴られている。

そして、この誤報事件の真相は鴎外が「元号考」執筆の際に助手を
務めた吉田増蔵の話へと繋がって行く。

本来は天皇の棺を担ぐ八瀬童子について書かれたものを探して
いて本書を手にしたのだが、この元号「昭和」誕生の話は面白
かったなぁ。

勿論、八瀬童子がどのようにして時代を乗り切って来たのかも
興味深かった。でも、もっと詳しい資料はないのかな。知っている
方がいたら教えて下さい。

多くの資料と当時を知る多くの人に取材し、丹念に書かれている。
猪瀬直樹もこの頃の作品はよかったんだなぁ。

昭和の元号についてを読んでいるうちに、桐生悠々の「昭和よ」
ではじまる文章を思い出した。