死んで来いとでも?

福島第一原発事故の際の東京電力テレビ会議のビデオ第二弾が
マスコミ向けに公開された。一部は東京電力のホームページでも
閲覧できる。

原子炉への注水作業や汚染水問題について。当時の吉田所長が
抱いた危機感はひしひしと伝わって来る。

それと対照的なのが東電本店だ。海水を注入して廃炉になることを
避けようとし、真水の注入にこだわる。汚染水の処理についても迅速な
対応が出来ずに吉田所長にせっつかれる始末。

あんな状態になっても、本店には危機感がなかったのかよ。原子炉を
守るより、現場作業員や住民の安全が第一だろうが。

この本店より酷かったのが首相官邸の発言だ。なんだよ、作業員の
被曝量なんて無視しろって。非常事態でも被曝量の上限は決められて
るんだぞ。

「死んで来い」って言っているのに等しいじゃないか。最終的に官邸が
責任を取る覚悟でもあったのか?

ないだろう。東電と官邸で、責任のなすり合いばかりしていたのだから。

先ごろ、バ菅直人が当時の思いを綴った本を出版した。この本でどんな
言い訳をしようと官邸の過剰介入は否定出来ない。

聞くところによると官邸地下の危機管理センターと、東電のテレビ会議
システムは繋げることが可能だったという。

そうであったのなら、細野氏を東電本社に常駐させて対策本部を作る
必要もなかったであろう。

テレビ会議の最中に官邸から頻繁に入る緊急電話。官邸も本店同様、
海水注入には難色を示していた。注水作業の足をひっぱったのは、
本店も官邸の一緒じゃないか。

現場の危機感と緊張感、正に命を懸けた対応を共有出来なかった
本店に加え、吉田所長は官邸にも悩まされていたんだな。お気の毒だわ。

引き続き『マロー・ボーイズ 放送ジャーナリストたちの栄光と屈辱』
(スタンリー・クラウド/リン・オルソン NHK出版)を読む。

「ボーイズ」だけれど、その初期には女性もいた。ポーランドへのナチス・ドイツ
の侵攻から始まった第二次世界大戦。メリア・マービン・ブレッキンリッジは
女性でありながら、戦火のヨーロッパから市井の人々の生活をレポート
した。

優れた記者であったがSBC首脳は難色を示す。それは彼女が女性だった
から。そういう時代だったんだよね。彼女が僅か6ヶ月でラジオのニュース
放送から離れなければ、女性記者の草分けになっていたかもしれない。