検証しないって?ウソでしょう

ルース駐日米国大使の表情は険しかった。米兵に対して夜間外出禁止令
が出ている沖縄で、またもや米兵の不祥事だ。険しくもなるだろうな。

今回の不祥事を起こしたのは基地の外に居住している米兵だという。
自分たちの置かれている立場、沖縄の感情。分かっていないのだろうか。

問題を起こした米兵には呆れるけれど、ルースさんはお気の毒に感じたな。

『なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか 見捨てられた原発直下「双葉病院」
恐怖の7日間』(森功 講談社)読了。

福島県大熊町。逃がし日本大震災後に事故を起こした福島第一原発
立地する自治体である。

原発事故から間もない2011年3月17日、福島県の災害対策本部は
大熊町最大の医療施設・双葉病院の患者が自衛隊により救出されたが、
その場に病院関係者が不在であったと発表した。

実はそこには連絡の行き違いがあったのだが、一度、マイナス面で報道
された内容は後に訂正されたとしても最初の報道の方が印象に残って
しまう。

「患者を置き去りにした」。そう非難された院長をはじめとした双葉病院
関係者、関連施設の職員、福島県災害対策本部等へ取材し、震災発生
当日から当初の報道が行われたあとまでを追ったノンフィクションである。

あの混乱のなかで情報や連絡の錯綜は致し方ない部分もあるだろう。
それにしても町役場への再三の救出依頼、病院を訪れた警察官に
よる無線での連絡があったのにも関わらず、どうしてこれほどまでに
患者の救出が遅れたのだろうか。

同じ地域には他にも医療施設があった。そこでは原発事故発生から
短時間で患者の搬送が完了しているのに、最大規模を誇った双葉
病院だけが取り残されてしまったのだろうか。ここが分からないんだ
よねぇ。

しかも双葉病院では最初に避難出来たのは比較的症状の軽い患者
たち。そこへ看護師・介護士が付き添ってしまったから、病院に残され
たのは重症患者と院長のみ。

本書は院長を弁護する為に書かれているのだろうけれど、医療関係者
としてひとり残った院長の行動にも疑問の余地はあるんだよな。重症
患者ばかりなのにロウソクを調達する為に留守にしていたりとか。

双葉病院と関連の高齢者介護施設では原発事故から避難後まで
50人の患者が死亡している。なかには病が原因で亡くなった方も
いたろうが、過酷な避難行程と医療設備のない体育館への避難で
命を落とした人の方が多いだろう。

この双葉病院の問題に関しては素人が考えても検証が必要だと
思うのだが、福島県の災害対策本部は検証する気はないらしい。

本書にも収録されている災害対策本部の言い訳を読んでいると
本当に腹が立って来る。おかしいじゃん、検証しないってさ。

そもそも重症患者の避難先が高校の体育館って決めたのはどなた?
死んでもいいとでも思っていたのか。

原発が深刻になるごとに次々と避難区域を拡大して行った国の責任
もあると思うのだ。ころころと避難区域を変えたことで避難先の確保が
困難になったのは確実なのだから。