幸福と繁栄への約束は砕け散った

「年明けは近いうちとは言わなない」

野党のセンセイかと思いきや、口先番長・前原だった。おいおい、
いつから野ダメ首相のスポークス・マンになったんですかぁ?

火消しに必死の民主党のセンセイたちも大変だね。口先番長こそ、
入院させといた方がいいんじゃないか?

『ボーパール 午前零時五分 下』(ドミニク・ラビエール/ハビエル・モロ
 河出書房新社)読了。

アメリカに本社を構える多国籍企業の工場は、インド・ポーパールの
人々に幸福と繁栄をもたらすはずだった。

5億人とも言われた農民を見込んだ殺虫剤製造工場は、当初の思惑
通りの収益を上げることが出来ない。

そこで打たれた手は当然のような経費削減だ。部品の交換時期は
延期され、腐食した管は見過ごされ、安全装置は解除され、化学
物質の専門家は工場を去った。そして、工場は操業停止を迎える。

殺虫剤の製造は行われなくなった。しかし、工場のタンクの中には
毒性の高いイソシアン酸メチルが大量に保存されていた。

1984年12月2日から3日にかけての深夜に、その事故は起こった。
イソシアン酸メチルのタンクに流れ込んだ水が発熱反応を誘発し、
有毒ガスが街に流れ出した。

正確な死者数は現在でも判明していない。1万5千とも3万とも言われる。
有毒ガスに襲われた人々の描写は壮絶だ。人の背丈を流れるガスから
身を守る術もなく、多くの人が苦悶のうちに死を迎え、生き残った人々に
も重い後遺症を残す結果となった。

事故を起こした工場の持ち主である多国籍企業、工場周辺に住む
貧困層の人々、事故当時に押し掛ける被害者たちの手当にあたった
医療従事者等。多角的な視点で事故までの経緯と、事故後の経過を
綿密に追っている。

ぼんやりとしか覚えていなかった事故だが、現在でも汚染物質は
そのままに放置されていると言う。こんな大事故を追った作品が
これしかないなんてなぁ。日本語訳が非常に読み難いのが残念だ。

チェルノブイリ同様、この大事故は今後も語り継がれなくてはいけい
のではないだろうか。