全国民を人質に闇に消えた

週刊朝日で始まった佐野眞一の連載が物議を醸している。題して
「ハシシタ」。大阪市長の人を掘り下げたノンフィクションである。

そして出ました、過剰反応。当の大阪市長の人は朝日新聞系列からの
取材は拒否するんですって。

新聞広告で連載が始まったのは知っていたが、未読であるから内容に
ついては何も言えないけど、大言壮語の割にはケツの穴がちっちゃい
のね。大阪市長の人は。

今後の展開が楽しみ〜。ええ、単なる野次馬ですよ私は。

『未解決事件 グリコ・森永事件〜捜査員300人の証言』(NHKスペシャル
取材班 文藝春秋)読了。

警察庁広域重要指定114号。捜査対象は12万5千人、関わった捜査員は
述べ130万1千人。

1984年の江崎グリコ社長の誘拐から始まった一連の食品会社恐喝事件で
あるグリコ・森永事件。犯人の逮捕に至らぬまま、2000年2月13日にすべて
の公訴時効が成立した。

2011年7月にNHKスペシャルで2夜連続で放送された番組は、当時の捜査員
たちの話を元にした再現ドラマの部分が好きになれなかった。

本書のように生の声を収録した方がいいな。取材者の「苦労しました」みたいな
ところは興醒めだけれど。

非常に特異な事件であった。企業やマスコミに送り付けられる犯人からの
脅迫状や挑戦状。女性や子供の声を録音した電話。そして突然の終結
宣言。

警察関係者のほとんどが無念の思いを語っている。犯人がごく近くにいた
時が何度かあった。もう少しで事件の核心に迫れる場面もあった。それが
ことごとく微妙なずれの為に失敗に終わっている。

私は今でもこの事件には興味をかき立てられる。このテレビ番組の為に
電話での女性と子供の声を新たに音声分析をした結果には驚きだ。

30〜40代とされていた女性の声は中学生くらいの女の子。同一人物と
されていた男の子は、学齢前の複数の男の子との結果が出ている。

犯人は複数。しかも現金受け渡し場所の指示の電話に子供さえも使って
いる。なのに犯人たちは仲間内のほころびも見せず、一方的に終結
宣言して闇に消えた。

かい人21面相。そしてキツネ目の男。元捜査員のなかにはキツネ目の
男を今でも夢に見る人もいる。

全日本国民を人質に取り、「劇場型犯罪」という言葉を生み、人々の
興味を引きつけたまま彼らはどこへ行ってしまったのか。

この事件に着想を得て書かれた高村薫の小説「レディ・ジョーカー」も
面白く読んだ。もしかしたら、この小説のような結末が現実に起こっている
のかもしれない。