7万枚のネガを持つ男

ロバート・キャパ』(ベルナール・ルブラン/ミシェル・ルフェーブル
 原書房)読了。

1954年5月25日。戦乱のインドシナでひとりのカメラマンが命を
失った。そこから、多くの伝説が始まった。

本名、エンドレ・エレネー・フリードマンハンガリー生まれのユダヤ系で
あった彼は、ロバート・キャパとして世界の写真史のみならず報道の
歴史にその名を刻んでいる。

本書は2007年に発見された「メキシカン・スーツケース」と呼ばれる新資料
と、キャパの死後に見つかった資料を元に、この偉大な戦場カメラマンの
軌跡を追っている。

キャパと言えばスペイン内戦時に撮影された「崩れ落ちる兵士」の写真が
有名だが、この写真についてはこれまでにも様々な議論がなされている。

銃弾に倒れる兵士。撮影された日時はいつなのか?この兵士は誰なのか?
否、演出された写真ではないのか?

あまりにも有名なこの写真のネガは未だ発見されていないところから、
今後も謎は尽きないだろう。

ギャンブル好きでほら吹きで、それでも偉大な戦場カメラマンは生きている
間に自らの伝説を作り、その死後にも大いなる謎を残して伝説の中にいる。

2007年の新発見のように、今後もキャパに関する資料が見つかる可能性
もある。そのなかに失われたネガが含まれていれば、キャパに関する
謎が少しは解明されるかもしれない。

生涯に7万枚のネガを残した男は、インドシナで地雷の爆発に巻き込まれた。
40歳。あまりにも早過ぎる死であったが、それもまた伝説に一役買っている
のかもしれない。