人間、この醜悪で美しきもの

2030年代に原発はゼロにします。でも、閣議決定はしません。

なんじゃ?そりゃ。何をどうしたいんですかぁ?民主党の皆さん。

ゲーリー家の人々 アメリ奴隷制下の自由黒人』(フランク・J・
ウェブ 彩流社)読了。

本はタイトル買いをする癖がある。この癖で何度も失敗しているのだが、
懲りることがない。学習機能がないのか、私は。でも、立ち読みって出来
ないんだよな。本は売り物だから、立ち読みは商品の一部を盗んでいる
気持ちになってしまう。

本書ももれなくこの癖が発揮されて購入した。歴史検証の書かと思い
きや、小説だったので今月のノルマの1冊にした。

舞台は1800年代の後半のアメリカ。南部ジョージアの富裕な大農場主
ゲーリー家当主には黒人との混血女性の聡明な妻(法律上ではない)と
ふたりの可愛い子供がいた。

もし、自分が死んだら妻と子供はどうなるのだろう。法定相続人が奴隷と
して妻と子供を売り払ってしまうのではないのか。

将来を憂う当主に、南部のような奴隷制度のない土地へ移り住み、同じ
血の流れる同性の友達が欲しいと妻は訴える。

そして、一家はフィラデルフィアへ引っ越す決意をする。確かにそこでは
奴隷ではない自由黒人たちが多くらしていた。なかには才覚を活かして
富裕になった黒人もいた。

だが、そこには当主が憂いた遠い将来の不安とは別種の悲劇が待ち構え
ていた。

物語はゲーリー家の2代に渡る物語として進行する。そこへ様々な階級
の白人・黒人が絡み、当時の黒人たちが置かれた立場、白人たちが
抱えた黒人への感情を描き出している。

当時のフィラデルフィアでは黒人たちを憎む白人によって、大規模で
陰惨な襲撃事件が起きている。本書に出て来る襲撃シーンはこの
実際の出来事を下敷きにして書かれているようだ。

ゲーリー家のふたりの子供の肌は黒人の血を感じさせないほどに白い。
しかし、ふたりの母が混血女性だと分かっただけで剥き出しにされる
白人たちの憎悪には背筋が寒くなった。

また、それまで奴隷制度廃止論者だったのに身近に黒人が住まうように
なったことで手のひらを返したような仕打ちをする人。反対に奴隷制度に
対して無関心だった人が目の前で黒人に対する差別を目にして考えを
改める人。人間の心の複雑さが絶妙である。

肌の色が違う。たったそれだけで人間扱いされないどころか、家畜以下の
扱いしかされない人たち。同じ人間なのに、何故、そんなことが出来るのか。

子供の頃、家族で揃って観たテレビ・ドラマ「ルーツ」を思い出した。

結末は哀しみと喜びで結ばれた物語は、自らも自由黒人である著者に
よって書かれ、1857年にイギリスで出版され話題を呼んだそうだ。

アメリカでは見向きもされなかったようだけれど。