あの頃はよかった

昨日は迎え盆で実家へ行っていた。久し振りに妹一家と顔を合わせる。
お墓へ行く道々、近所のコンビニ(私がしょっちゅう不愉快な思いをさせ
られた店)が移転した…と話していて思い出した。

このコンビニがオープンした時、亡父は開店当日早々に買い物に行き、
サンドウィッチやら何やらを「誰が食べるんだ?」と思うほど、大量に
買い込んできたっけ。

千葉県にあるネズミの国にもオープンから時を置かずに妹を連れて
行ってたな。あ…もしかして、新し物好きだったのかな。笑。

『昭和の終わりと黄昏ニッポン』(佐野眞一 文春文庫)読了。

思えば平成生まれも増えたんだよね。既に社会人の年齢になっている
人たちもいる。

そんな人たちには記憶にさえない「昭和」だけれど、私のような「昭和の児」
にとっては「昭和」は徐々に遠くなりノスタルジーさえ感じさせる元号にさえ
なりつつある。

本書は単行本で発行された「ドキュメント 昭和が終わった日」に「平成不況
を歩く」を加えての文庫化だ。

昭和天皇が病床に伏してからの経過は実際に体験している。あの時期は、
日本中が異常とも言える静かな興奮状態にあったのではないか。

昭和最後の日々については他の作品でも読んでいるので、侍医や側近の
話などは目新しいものはない。ただ、元号の決まる過程が多少の謎を秘め
ていて面白かった。

昭和天皇崩御と共に、正に激動の昭和は幕を閉じ平成の時代が始まった。
著者は平成には昭和にはなかった閉塞感と暗さがあるという。

でも私には諦観から発する不安定な明るさに感じられるんだけどね。

先が見えない不況、貧富の格差の拡大、崩壊する医療制度。それは平成に
なったから発生した事象ではなく、萌芽は昭和の時代にまかれたのじゃ
ないかな。

著者の昭和へのノスタルジーは分かるのだが、だからって平成の世を
それと引き比べてしまうと「あの頃はよかった」だけになってしまう。

平成だってさ、きっと捨てたもんじゃないはずだよ。