喝采、未だ鳴り止まず

「ノー・サイドにしましょう」。ならなかったねぇ。やっぱり離党ですって。
そして、離党しなくても造反者と棄権者には処分ですって。

ねぇ、被災地復興はどうしたの?

ちあきなおみに会いたい。』(石田伸也 徳間文庫)読了。

これほど、同じ音楽業界の人々から復帰を切望されている歌い手が
いるのだろうか。著者が取材した誰もが、ちあきなおみの歌を、彼女の
歌謡界への復帰を期待している。

伴侶でもあり、自身のプロデューサーでもあった郷硏治の死去に
伴い、「しばらくは静かに生活したい」との言葉を残して表舞台を
去って20年が経過した。

そんなちあきなおみの歌手デビュー前からの軌跡を追ったのが本書
である。

テレビの歌番組で彼女が歌っている姿は、どことなく怖かった。それは
夜へ急ぐ人」の「おいで おいで」の歌詞の部分と振付が相まって深く
印象に残ったからなのだろう。

その後、独り舞台を観る機会があった。ビリー・ホリディを演じた舞台
だった。圧倒的な歌唱力に茫然とした。テレビを通じて「怖い」と感じた
のは、その歌唱力と歌への入り込み方だったのではないかと、今と
なっては思う。

著者の思い入れが読み手に嫌味なく伝わって来る。そして、思う。なんで
彼女の歌をもっと聴いておかなかったのだろうか…と。

由紀さおりは歌い続け海外での評価が逆輸入されて、日本でも再評価
された。美空ひばりは死のギリギリまで歌うことに執着して伝説となった。
そして、ちあきなおみは歌を封印することで再評価され、伝説になろうと
している。

著者はいう。「歌い歌」は多くある。でも、「聴かせ歌」は絶滅している。
その「聴かせ歌」を歌える稀有な歌い手が、ちあきなおみなのだと。

本書を読み終わって、「矢切りの渡し」を聴いてみた。細川かたしが
歌うのとは趣の異なる「矢切りの渡し」は、著者が言うように「聴かせ
歌」だった。