ただ抱きしめて欲しかった

間もなく7月になるのだけれど、このところ湿度が低くて過ごしやすいね。
毎年、梅雨の時期はジメジメして、湿気に弱い我が家の白クマが凍える
くらいにエアコンを効かせているのだが、今年は未だエアコンが稼動して
いてない。

今年はこのまま・・・なんて考えは甘いよな。夏は夏らしく、きっと暑く
なるのだろう。

それにしても梅雨だっていうのに、台風ばかりでしとしと雨が降らない。
今年のお米は大丈夫かなぁ。

人間の証明』(森村誠一 角川文庫)読了。

「見てから読むか。読んでから見るか」。イケイケだった頃の角川書店
商法に、時を超えてやらている。

頭の中では映画のテーマ・ソングがエンドレスで流れ、登場人物それ
ぞれの俳優の顔が思い浮かび、文章と共に映画のシーンを鮮明に
思い出す。

それでもぐいぐいと引き込まれるようにして読み終わった。ラストは
映画と少々異なるけれど、原作も原作でいい。

幼き日の大事な大事な思い出を抱え、ニューヨークのスラムから日本へ
やって来た青年。願いはひとつ。「母に会いたい」。

宝石のような思い出は、朽ちそうな麦わら帽子とぼろぼろになった西条
八十の詩集に閉じ込めて。

子供の頃の幸せだった日を夢見た青年と、現在の幸せを守ろうとした
母。ふたりの思いの相違が悲劇を招く。

複数の事件が同時進行し、各々が抱えた哀しみが少しずつ歯車を
狂わせながら収束へ向かって行く。

母が自分に望んだことを悟った時の、青年の気持ちが切なすぎるね。
きっと抱しめて欲しかったのだろう。息子としての自分を認めて欲し
かったのだろう。

それが叶わぬことと分かった時、青年にはひとつの道しか残って
いなかった。

世界の中心ではなくても、愛を叫んだ者たちの物語だ。