考える

台風4号が関東地方に接近中である。本日の真夜中から明日の
明け方にかけてがピークらしい。

各地で土砂崩れや浸水の被害が出ている。もうお腹いっぱい
だよね、自然災害は。そうは言っても人間の意のままになる
訳でもなし。

「たまに温泉につかりながら「自然はいいな」と思うほど、「自然」という
現実は生易しいものではあるまい。「自然に帰れ」という言葉には詩的
真実は感ずるとしても、いまさら四つ足には戻れない。多分、われわれが
間違っていたのは、自然に帰らぬことではなかった。自分本位で考え、
暴走し、モノさえあればなんでも解決できるような錯覚に陥ったことだろう。」

朝日新聞きっての名文家・深代惇郎氏の天声人語の一文を
思い出したよ。

でも、大きな被害が起きないようには祈りたい。

『絵はがきにされた少年』(藤原章生 集英社文庫)読了。

大自然と野生動物に囲まれた雄大な大地。そして、それと対をなすように
語られる貧困と支援。アフリカ以外の国の人たちが思い浮かべる典型的
なアフリカのイメージ。

だが、それだけでアフリカを語っていいのだろうかという問題提起が
なされている。

先進国が考える援助が、本当にアフリカの為になっているのか。
現地で支援を受ける人たちは、本当にそれを必要としているのか。

例えば日本から自衛隊も出動したソマリア海賊の問題がある。彼らを
退治したり、彼らから輸送船を守るだけで問題は解決するのか。

そもそもは欧州から持ちこまれた産業廃棄物がソマリア沖に不法投棄
されたことで漁場が荒れ、漁民たちの収入が経たれたのではないか。

例えば子供の労働力の問題がある。学校にも行かず家計を助ける
為に働く子供たち。それを児童虐待だと先進国が騒ぎ出す。

子供たちは職場から締め出されるが、学校に戻るのではない。もっと
環境の悪い路上での商売を始めるのだ。

貧しいから可哀想。それはモノが溢れる地域の傲慢な思いなのかも
しれない。貧しくとも幸せな生活はあるのだろう。

著者が特派員生活の中で感じたことや、アフリカの人々から聞いた
話をエッセイ風にまとめている。読みやすいが読後には心にずしりと
重い何かを残す作品だ。