敵は本店にあり

俳優・大滝秀治が体調不良により主演舞台を降板した。
うむ、86歳という高齢だけに心配だ。

山頭火を演じる予定だったので久し振りに観劇にでも
行こうかと思っていのだけどな。残念だけど、仕方ない。

どうか、順調に回復しますように。

福島原発の真実 最高幹部の独白』(今西憲之+週刊朝日取材班)
読了。

「彼」は一体誰なのだろう。新刊書店で本書のタイトルを観た時に、
真っ先に思い浮かんだのは福島第一原発で陣頭指揮を執った
吉田前所長だった。しかし、それはないだろうな。

想定を遥かに超える地震津波。その直後から始まった福島第一
原発の危機的状況。事故の対応に当たりながら、「彼」はメモを
残す。

引き続く余震と再度の津波襲来の恐怖のなか、書かれたメモは時に
誤字があり、ひらがなだけだったり。それだけでも現場の緊迫感が
理解出来る。

全交流電源喪失、計器の異常、実際の原子炉のなかの状態が分
からない。そして爆発と放射性物質拡散の可能性。

人間の技術が作り出した原発という悪魔と闘う一方で、現場はもう
一方の敵と闘わなければならなかった。それが、政府と東電本店
だった。

政府はアメリカをはじめとした海外へのパフォーマンスに固執し、
本店は保身に走る。現場との温度差は益々開くばかりだ。

福島第一原発の事故が人災であることは既に周知の事実。それ
なのに、今後の出世しか頭にない本店幹部。

東京電力に求められているコストカットだが、この為に現場の
作業員の待遇が悪くなっているって…。カットするところが違う
だろうに。ちなみに事故前の東電の社長・会長の役員報酬
7千万円台という。50%カットとか言っているけど、それでも
3千万円台だぞ。

日本政府は2011年末、原子炉の冷温停止状態を宣言した。
しかし、誤魔化されてはいけない。これも海外向けのパフォーマンス
だ。燃料棒がどのような状態になっているか、未だ分かって
いないのだから。

尚、著者の今西氏は「彼」の協力でマスコミの立ち入りが許可されて
いない原発敷地内に潜入している。東電本店は犯人探しにやっきに
なっていたとか。そうだろうな、お役所よりもお役所的な会社だもの。

それにしても菅直人である。必要性の全くない事故翌日の原発視察
では、やはり怒鳴り散らしていたらしい。さもありなん。

無用な自衛隊ヘリからの注水といい、こいつは政治家なんかじゃない。
人殺しだ。