忘れられても忘れない

グループ・サウンズから、歌って踊れるアイドルへ。その先駆者とも
言うべきグループがフォーリーブスだった。

昨年、ター坊こと青山孝が亡くなった。今度はコーちゃんこと北公次
世を去った。共に肝臓がんというのは偶然なのか。

そして、訃報がもうひとつ。日本を代表する古書店街・神保町の生き字引
と言われた八木福次郎が亡くなった。日本古書通信社の前社長であり、
70年以上に渡って神保町を見守って来た人。

何冊もの著作が我が家の本棚に並んでいる。古書を愛し、古書店街を
愛した人は96歳で天に召された。ご冥福を祈る。合掌。

『東京オブジェ 人と歴史をさがしに』(大川渉 ちくま文庫)読了。

近年はすっかり出不精になってしまったが、東京散歩が好きである。
きっかけは家風散人の『日和下駄』と『墨東綺忌譚』だった。

そう、家風散人を気取って墨東をふらふら歩き回っていた時期があった。
本書はそんな東京散歩をしていた時期を思い出させる。

土地には歴史がある。歴史には人がつきもの。今では忘れられた東京の
歴史の名残をとどめる石碑や彫像、住居跡、レリーフなどを見ながら
そこに連なる人々の横顔を描いている。

好きだなぁ、こういう本。本書でも取り上げられている玉ノ井なんて、既に
駅名が東向島なんてそっけない名前に変わっている。駅の案内看板には
括弧書きで(旧玉ノ井)なんて書かれているけど、寂しいもんだね。

今年は東京スカイツリーが開業するのだが、これに伴って東武伊勢崎線は一
区間が「東京スカイツリー・ライン」に名称を変更し、最寄駅である業平橋
東京スカイツリー駅」にと変わってしまう。

玉ノ井のように、駅の案内看板に「業平橋」の名を残してくれないだろうか。
東京は日本橋の上には首都高速が走り、昔からの町名は改悪され、
その上駅名まで昔の名残をとどめなくなってしまうなんてねぇ。

時代が変わったと言われればそれまでなのだが、こうやってどんどん町の
歴史が忘れられて行くのは嫌だな。

春になったら、暖かくなったら、本書を片手に東京散歩を再開してみようか。
まだ訪れたことのない場所も多くあった。でも、東京オリンピックのマラソン
折り返し地点の碑がある調布市は少々遠いな。