無責任の連鎖

『検証 福島原発事故・記者会見 東電・政府は何を隠したのか』
(日隅一雄/木野龍逸 岩波書店)読了。

「戦後の黒塗り教科書かよっ!」と突っ込んだのは、監督官庁である
経済産業省の要請によって東京電力が「事故時運転操作手順書」
を提出した時である。

その大部分は黒く塗られ、読み取るべきものが読み取れなかった。
監督官庁に対してもこんなふざけた態度を取る東京電力である。
その記者会見では、多くの隠蔽・ごまかしが行われていた。

本書は、東京電力単独の記者会見から政府との統合記者会までに
出席し続けた弁護士とフリージャーナリストの著者ふたりが、その
でたらめさを検証している。

情報を開示しない東京電力側と、会見に出席した記者とのやり取りも
再現されており、いかにいい加減な戯言ばかりが述べられたかが
分かる。

先日、東京都の副知事である猪瀬直樹東京電力に対して電気料金
値上げの根拠を示すよう迫った。その回答書を提出したが、猪瀬副知事
はこれを突き返した。

曰く「私が望んだ回答がここにはない」

本書でも、記者たちが、被災者が、国民が求めることに口を閉ざした
記者会見の模様が検証されている。こんな東京電力に対し、政府は
公的資金の導入を決定したどころか、追加支援をも認めた。

何度でも言う。「想定外の津波」が原因で今回の事故が起こった訳では
ない。東北電力女川原発が9.1mの津波を想定していたのに対し、
想定を見直さず対策を怠って来た東京電力が招いた企業犯罪である。

現在、「原発国民投票」を呼び掛けている人たちがいる。ならば、こんな
企業に公的資金と言う名の税金を湯水のように投入することにも国民
投票が必要なのではないか。

繰り返し言う。減資もせず、メインバンクに債権放棄もさせず、税金が
使われるこの不可解。東京電力は責任の所在を明確にせよ。

尚、本書ではジャーナリズ側の反省点も述べられている。良書である。