文士たちの肖像

林忠彦。戦後の世相や文士を撮影したカメラマンである。既に鬼籍に
入っているのだが、その林氏の写真展が開催されている。

場所は東京・渋谷の「たばこと塩の博物館」。ここは入場料が安いので、
渋谷に行く時は時々立ち寄る。

今回の写真展は題して「紫煙と文士たち」。喫煙者に風当たりが強い
昨今、この企画展は見逃せないだろう。

太宰、安吾、作之助…。あの頃、文士たちは酒と煙草と共にあった。
さぁ、見に行かなくちゃ。会期は3月18日まで。暇を見つけなきゃ。笑。

『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・
紅葉・緑雨とその時代』(坪内祐三 新潮文庫)読了。

あぁ、なんで日清戦争前夜までなのだろう。旋毛曲りの7人の、それぞれの
終焉までを描いて欲しかった。

でも、明治35年に最初に世を去った子規から、昭和30年まで長生きした
外骨までを描いたら、怖ろしい巻数になりそうだけれど。笑。

明治時代と言えば遠い昔なのだが、そんなことを感じさせないくらいに
7人の生きた世相を描いた本書は読み終わるのが惜しいくらいに面白い。

7者7様、時にその道は交わり、時にすれ違い、時に離れ。近代日本の
夜明けの時代の青春がぎゅっと詰まっている。

ただし、明治文学の基礎知識がないと混乱するかも知れぬ。ある程度、
7人それぞれの来歴を知ってから読むのがいい。

今では高層マンションが建つ東京・石川島もこの頃は監獄だったんだよ
なぁ。外骨先生、収監されても監獄で本を出版しようとしているし。笑。

また、7人を取り巻く人々も、坪内逍遥二葉亭四迷淡島寒月森鴎外
泉鏡花等々、オールスター揃い踏みだ。

尚、漱石書簡集でも読んだが、漱石が親友・子規に宛てた手紙が大好きだ。
その子規が亡くなった時、漱石はロンドンにいたんだよなぁ。しみじみ。