この国の為に

信じられん。人を殺・すと宣言した人間に拍手喝采とはどんな神経なんだ。
アメリカの大統領選の共和党候補指名を競う候補者のテレビ討論での
ひとコマだ。

発言したのは前マサチューセッツ周知事のロムニー候補。タリバンの最高
指導者がパキスタンに潜伏していた場合を問われての対応だ。

だから憎しみの連鎖は止まらないのだ。言う方も言う方だが、それに拍手を
送る大衆もどうにかしているんじゃないか。

まかり間違ってこんな人物がアメリカの大統領になった日には、世界中で
暗殺の嵐が吹き荒れるんじゃないか。

日本に限らず、政治家の質が低下しているらしい。どうか指名から漏れて
下さい。

ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』(服部正也 中公新書)読了。

私たちは自分のなかにいろんなフィルターを持っている。例えば、世界を
観る時、そこには「アメリカ」というフィルターが存在していることが多々ある。

先進国の中でも非白人国の日本であるからこそ、世界各国で出来ることが
あるはず。そんなことを本書は教えてくれる。

赴任したルワンダ中央銀行の職員は、銀行業務のなんたるかを知らず。
政府に関わる外国人顧問はアフリカの旧植民地を見下し、自国の利益
になることばかりを考える。ルワンダ独立に貢献した政治家たちも、
白人種へのコンプレックスからか、自分の考えをなかなk表に出そう
とはしない。

ルワンダ人には任せられない」。外国人顧問や外国人商人の決まり文句
に疑いを持った著者は、直接ルワンダの人々と話をし、この国が発展する
には何が一番いいのかを考える。

著者が関わったのは銀行業務だけではない。富が海外へ持ち出されるより、
ルワンダ国内に還元させるよう、広範囲な活動を見せる。

日本のODAはひも付き援助だとよく言われるが、ルワンダルワンダ人に
とって、最良の手段に心を砕いた日本人がいたことを、私たちは誇っていい
のではないか。

当初は5カ月だった任期が、大統領をはじめとした政府要人に請われて
更新するうちに著者の任期は6年になった。そして、財政の安定を確信し、
中央銀行の総裁もルワンダ人が務めるべきだとの言葉を残してルワンダ
を去る。

順調に成長しそうなルワンダではあったが、1990年のルワンダ愛国戦線
の北部侵攻から始まる動乱で大虐殺が始まる。

増補稿としてこのルワンダ動乱が捻じ曲げて伝えられていないかとの
話は目からうろこ。この動乱には、さぞ心を痛められたことだろう。

日本人初の世界銀行副総裁を務め、定年退職後も各国の会議に参加し
1999年に世を去った服部氏。以降、日本から第二の服部氏が誕生して
いないのが残念。