大いなる決断

発売中止である。中国での最新機種の携帯電話ではない。女子フィギュア
スケートの浅田真央選手のエッセイ集である。

発売は2月8日だった。数日前に新聞広告で目にした。確か以前にも東日本
大震災のチャリティ本も出していたよなぁ…と思って眺めたのだが、確かに
販売中止の原因になったコピーは目を引いた。

「ママ、ほんとうにありがとう」

コピーの文句である。これに著者である真央ちゃんが不快感を示した。
競技生活を通してのメッセージブックとしたかったと本人は語っている。
それが、自身の母の死を売り物にされようとは思わなかっただろうな。

担当編集者が悪いのか、広告担当者の暴走か。出版は煽ってなんぼ
ではあるけれど、著者本人の意向を無視した宣伝方法はいかんだろう。

多くの人に読んで欲しかったであろう本なのに、発売中止の決断をした
真央ちゃんに拍手。

『蜘蛛女のキス』(マヌエル・ブイグ 集英社文庫)を読み始める。

今年の目標…というほど大袈裟なものではないけれど、1月に1冊、小説を
読もうと思っている。そして手に取ったのがこれ。

ゲイのモリーナと政治活動家のヴァレンティン。ふたりがいるのは刑務所の
監房だ。全編ほぼ二人の会話で進む南米文学の名作。

映画にもなったし、日本でも舞台にもなった。私が観たのはモリーナ役が
村井国夫だったけ。