読み納め

年の瀬も押し詰まって訃報である。ボードビリアン・内藤陳が亡くなった。
新宿ゴールデン街の店「深夜プラスワン」でお目にかかったことがある。

ミステリー、ハードボイルド小説の書評もし、膨大な読書量の人だった。
食道がん。享年75歳。「読まずに死・ねるか!」。もっと読みたい本が
あったんじゃないか?ご冥福を祈る。合掌。

閑話休題

今年も残すところ、あと数時間。昼間、都内へ外出したついでに年越しそば
のはしごをして来た。勿論、夕食もそばである。

そこでふと気が付いた。今日って、そばしか食べてないのではないか。
朝食はカーチャ(そばの実の粥)だっし…。後で夜食を食べよう。

今年も色んな事があった。一番大きな出来事は、やはり東日本大震災
福島第一原発事故だろう。震災と津波が大きな悲しみを、原発事故では
憤りを呼び起こした。

昨夜、テレビを見ていたら「東京はいつもと変わらぬ年の瀬を迎えています」
とのナレーションが引っかかった。震災関連の番組だった。表面は変わって
いないかもしれない。でも、あの震災は多くの人の心に何かしらを残している。

新たな年は、大きな悲しみが少しでも小さくなるよう、そして僅かずつでもいい
方向へ進めるように願いたい。

今年も多くの方に拙い日記にお付き合い頂いた。この場を借りて、お礼申し
上げる。有難うございます。そして、皆様にとって来る年が幸多い年になり
ますように。また、来年も懲りずにお付き合い頂けますようお願い致します。

『偶然完全 勝新太郎伝』(田崎健太 講談社)読了。

「大統領や首相の代わりはできるけど、勝新の代わりは誰ができるんだ?」

本人がそう語った通り、勝新太郎はかけがえのない役者だった。彼が亡くなって
14年が経つのだが、石原裕次郎美空ひばりとは違い、命日となってもまるで
勝新など存在しなかったように彼の話題が出て来ることがない。

本書は共演者やスタッフ等、周辺を丹念に取材して書かれている。その弊害か、
饒舌になり過ぎている部分があり、中だるみする。

監督して、演出家としての勝新のことならば先に発行された『天才 勝新太郎
春日太一 文春新書)の方が興味深く読める。

終章では著者の一人称の文章で、雑誌連載で勝新に関わるところからその死
までを描いているのだが、この部分の感傷的表現を抑えられなかったのか。

「今後パンツははかない」の大・麻事件、久し振りの映画「座頭市」での真剣での
事故、妻・中村玉緒との離婚記者会見騒動等、暗い部分もあって評伝としては
バランスが取れているのだが、残念な部分も多い。

役者としては自然な演技にこだわり、仕事を離れても旺盛なサービス精神を
発揮し、周りに気を遣い、人々を楽しませた勝新のような役者は、もう出て
来ないだろう。

勝新を慕った役者のひとり、原田芳雄も今年、旅立った。向こうで、楽しく
やっているかい?