理想と現実

女子スピードスケートの岡崎朋美が出産を経て競技会に復帰した。
40歳、ソチ・オリンピックを目指すそうだ。頑張って欲しいね。

そして、ロシアでは男子フィギュア・スケートの皇帝・プルシェンコ
復活。国内大会とはいえ、いきなり優勝を掻っ攫って行った。
一体、何年第一線でやる気なんだよ。汗。

こちらも目指すは地元ロシア開催のソチである。ファンとしては嬉しい
限りなんだけどね。楽しみだな、ソチ。行きたいな♪

昭和天皇 「理性の君主」の孤独』(古川隆久 中公新書)読了。

根底にあったのは東宮御学問所で授けられた徳治政治、理想としたのは
「君臨すれども統治せず」の大英帝国、目指したのは政党政治と協調外交。

しかし、先の大戦前夜、昭和天皇が思っているようにはこの国は進まなかった。

昭和天皇に関してはその死後、側近たちの日記などの一次資料や多くの
研究所が世に出た。その膨大な量の資料や報道等を綿密にすり合わせて、
その時々で昭和天皇が何を思い、どのように行動したのかを浮き彫りにし
ている。

理想と現実の乖離に苛立ったり、側近に不満をぶつけたり、無力感に苛まれ
たり。磁極の判断を誤った個所も歪曲することなく書かれている。

また、自身の戦争責任についての発言もあり、考えさせられる部分も多い。

終戦後、昭和天皇には退位論もあった。もし、あの時、退位していれば戦後に
事あるごとに持ち出された戦争責任論も違ったものになったのかも知れぬ。

責任を取って退位していたのなら、戦後のヨーロッパ訪問で各国の厳しい
世論に晒されることもなかったのだろう。亡くなって以降もこの問題には
繰り返し持ち出されることを考えると、在位し続けることが昭和天皇
責任の取り方だったのだろうか。

記者会見で「これまでで一番の思い出は?」と聞かれると、皇太子時代の
ヨーロッパ訪問であったと答えていた昭和天皇。死後、宮内庁の職員が
机を整理すると引き出しからパリの地下鉄の切符が出て来たという。

即位から崩御まで、辛いこと・苦しいことの多かったのだろうな。

本書はバランスの取れた良書だ。巻末には多くの参考文献が掲載されて
いるので、折を見て読みたいものを探そう。
客観性に徹した良質な研究書である。