切々と哀しい

子供への虐待事件が後を絶たない。全身に煙草の火を押し当てられた
子の事件があったと思ったら、今度は肝臓が破裂するまで殴っただと?

容疑者は母親の交際相手の男だ。身動き出来ないようにして、同じ目に
遭わせてやりたいね。こんな奴は。

今回は血の繋がりのない関係だったが、実の親の犯行も一向に減らない。
母性とか、父性とかって、一体どこへ行ってしまったのだろう。

『ゴーストタウン チェルノブイリを走る』(エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ
 集英社新書)読了。

運命の日、1986年4月26日。旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所
爆発事故が起こった。この日から、チェルノブイリ地域からは続々と
住民が避難し、現在でも放射能の強い影響を受けている為に広範囲で
立ち入りが禁止されている。

そんなチェルノブイリを愛車KAWASAKIのKINJAで走り、レポートを続けて
いるロシアの女性写真家のウェブサイトの書籍化である。

ビジュアル新書という分野になるのか。豊富に掲載された写真からは、人間が
いなくなった街々の怖いまでの静寂が伝わってくるようだ。

メンテナンスされることもなくなったアスファルトから芽を出す木、玄関が蔦に
覆われた民家、写真も手紙も思い出の品も持ち出すことなく住人が去った
室内、散乱した荷物の中に取り残された人形だけが転がる幼稚園。

添えられた詩的な文章と写真に交互に目をやると、切々とした哀しみが
込み上げている。

今年はチェルノブイリ事故から25年目。今から20年後、もしや福島は本書に
映し出された街々と同じようになってしまうのか。

「石棺の放射能は、少なくとも10万年残る。エジプトのピラミッドは、5000年
から6000年前に作られた。文化はその区切り区切りに、消えないものを残し
てくれる。ユダヤの時代は聖書を、ギリシャの文化は哲学を、ローマは法律を。
そしてわれわれは、この石棺を残す。石棺は、この時代の何よりも長く、
ピラミッドより長く残るだろう。」

我が旦那が飼って来たものを略奪して読んだのだが、略奪してまでも読む
価値ありである。