プロメテウスの火

沖縄の普天間基地移転問題に絡んで、防衛省の沖縄防衛局長が不適切な
発言をしたとか。

発言内容をニュースで聞いたが、言ったことが本当であるなら人格を疑うね。
他に表現のしようはなかったのか?更迭間違いなしだもんねぇ。

それにしても、この発言、オフレコでされたんだろう。何で表に出て来るんだ?
第一報を流したのはどの媒体なんだろう。

原発事故はなぜくりかえすのか』(高木仁三郎 岩波新書)読了。

茨城県東海村でのJCO臨界事故の翌年である2000年に発行された本である。
著者は原子力産業の黎明期に関連企業に入り、その後、反原発脱原発
転じ、億単位の金を積まれても御用学者にならなかった信念の人である。

11年前に書かれたものではあるが、著者が危惧していたことが今回の福島
原発事故で実際に起こってしまった…という感じだ。

日本の原子力産業に欠けているものは何か。それは現場で実際に原子力
携わる人々の危機意識である。すべてをコンピュータ上でシュミレーションし、
実際の放射能がどのようなものかを知らぬ。

そして、唯一の被爆国であるはずなのに原子力の安全性を強調するあまりに、
危険性に目をつぶって来たから、著者のような批判派には会議や審議会に
声が掛からぬ。

癌に罹患しながらも、JCO事故を目の当たりにした著者が、病床から発した
最後のメッセージである。ページ数がもう少し欲しいのが残念だ。

福島原発事故以降、雨後のタケノコのようにこれまで原発に対して何も
発言して来なかった学者(?)までもが関連本を出している。そんな俄か
作りの著者を読むならば、本書と、同じ著者の『プルトニウムの恐怖』を
読む方がいい。

原発に限らず、人間の技術を結集して作り出したものはプロメテウスの火
だとつくづく思う。◎◎◎な良書。もう少し、生きていて欲しかった。