やましき沈黙

ニュースを伝えるテレビから、それは突然聞こえて来た。何度聞いても
心臓に悪い音だな、緊急地震速報は。今朝も地震があったが、今晩の
震源は北海道だ。

もう二度と3月のような地震には来て欲しくないけどなぁ。鎮まれっ!
プレートめっ!!

日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦』(NHK
スペシャル取材班 新潮社)読了。

多数に上る反省会テープの聞き取り、当事者及び遺族への取材、膨大で
未整理の資料との格闘。番組制作に携わったプロデューサー、ディレクター
ら、戦後世代の取材する側の迷いと苦悩が正直に記されている。

陸軍は悪玉、海軍は善玉。先の大戦においてこんなイメージを抱いている
のは私だけではないと思う。この構図がひっくり返るのが海軍反省会
語られている。

陸軍の暴走を抑えられず開戦に踏み切った…なんて感じで語られること
が多い日本海軍だが、そこには組織としての保身があった。

本書の多くを占める「特攻」にしてもしかり。現場からの強い要望で開始
されたと言われる「特攻神話」さえ崩される。特攻した末端の兵士たちに
ついては多くの書物が記されているが、特攻させた側の記録は皆無と
言っていい。

そして、敗戦後の戦犯裁判においてさえも海軍は組織を守ることに
懸命になる。A級戦犯として処刑された人たちに、海軍上層部の人間が
ひとりもいないのは何故か?

組織防衛。それに徹したのが日本海軍だった。本書は海軍中枢に籍を
置いたひとりひとりを責めるのではなく、個人よりも組織に重きを置いた
この時代の系譜が現在も日本社会の根底にあるのではないかとの疑義
を呈している。

東京裁判を終えた日本弁護団が異口同音に、陸軍は暴力犯、海軍は
知能犯、いずれも陸海軍あるを知って国あるを忘れていた。敗戦の責任
は五分五分であると。けだし言い得て妙、あり得べき至言ではあるまいか
と。東京裁判は日本人の魂を奪い去り、いわゆる敗戦ホケとなったため、
占領政策は日本の歴史に断層を生じ、戦後ひたすら物の面にのみ
走った結果、東京裁判の判決は知らず知らずの間に日本の昭和史と
して定着しつつあるかに見える。今一度日本自らの手によって昭和の
正しい歴史を見いだし、断層を埋めたうえ、日本の将来のあるべき姿、
進むべき道を自らの手によって発見する事が必至と考えられる」

第92回反省会での発言の一部である。日本は東京裁判の終了をもって、
先の大戦に幕を引いた。それは、ドイツのように後々まで徹底して戦争
責任者を追及を辞めた瞬間でもあった。

「それは違う」「これは間違っているのではないか」。個人個人はそのよに
感じても、組織を守る為には言うべき事さえも封印してしまう。「やましき
沈黙」。戦争責任をうやむやにしたことで、日本には現在でも「やましき
沈黙」が蔓延していやしないか。