絶望の地で

ダイハツのテレビCMのブルース・ウィリスに続き、今度はあのジャン・レノ
ドラえもんである。あぁ…映画界のスターは仕事を選ばないのか。

ふたりとも好きだけどさ。でも、ジャン・レノは私の中では永遠に「レオン」
なんだけどなぁ…。

『ドキュメント 東日本大震災 救助の最前線で』(Jレスキュー編 イカロス
出版)読了。

東京にいても不気味な揺れを何度も感じた東日本大震災である。電車が
ストップして派遣先の休憩室で待機していた時、テレビ画面が映し出して
いたのは東北地方を襲った津波の速報と、千葉県のコンビナート火災
だった。

翌日からのテレビは津波が襲った映像を延々と流していた。陸に乗り上げる
船、土ぼこりを上げて流される民家、避難する車を追い掛けるように押し寄せる
水はビニールハウスをなぎ倒した。

画面を通じて目にすることが信じられなかった。こんなことが起こるのか。
これは夢じゃないのか。悪夢じゃないのか。

その悪夢の現場で震災発生直後から活動を開始した人たちの証言は、
これまでの災害救助の経験さえ覆す「予想外」の連続のなかでの
苦悩と、それでも救助の為に懸命に活動した貴重な記録である。

阪神淡路大震災でも多くの自治体の消防・救急が出動したが、地震
加えての大津波の被害は百戦錬磨のレスキューでも勝手が違った。

途切れがちな通信、遅々として進まない情報収集、津波によるがれきが
堆積した道路との格闘、相次ぐ救助要請。混乱した絶望の地で、それでも
生存者の救出をいかに素早く行うか、各隊が懸命に考え動く。

なかでも陸前高田消防団の話は特筆に値する。今回の大震災では
ネットでの情報が多くの役割を果たした。何もなくなった陸前高田で、
必要なものを求める為に活用されたのもインターネットだった。

麻生幾『前へ!』では国交省の外局と民間の協力企業の活動が興味深かったが、
本書では東京消防庁の車両整備部にもスポットを当てている。こういう裏方が
いてこそ、現場での救助活動が円滑に行えるのだなぁ。

麻生幾の本では政府の動きも併記されていたので、「何なってんだ?日本政府」
とか「海江田万里、許すまじ」と思って読んだが、本書は純粋に救助活動のみ
を追っている。

日常、意識しないで通り過ぎている消防署だが、我々はここに勤務する人たちに
守られ助けられ生きるんだよなぁ…と感じた。◎な良書。どうやら写真集も出て
いるらしい。欲しいな。