それでも彼らは生きている

チベットに自由を」「ダライ・ラマ14世を戻せ」。そう叫んで、元僧侶の
青年が焼身自殺を図った。今年の3月以降、8人目の自殺者だという。

中国政府の弾圧に対する抗議の自殺なのだが、中国側は「インド亡命
政府の指示」「自殺者を民族英雄としてそそのかしている」と表明した。

「フリー・チベットチベットに自由を」。中国政府の弾圧が続く限り、
こんな出来事が続発するのだろう。哀しいよなぁ。

日本のメディアは荒川のアラちゃんばっかり報道してないで、こういう
国際ニュースをもっと流してはどうか。

『「戦地」に生きる人々』(日本ビジュアル・ジャーナリスト協会編 集英社
新書)読了。

上記の中国の弾圧が続くチベット、軍事政府が支配するビルマミャンマー)、
アメリカの水爆実験の後遺症に苦しむマーシャル諸島中南米の最貧国
ハイチ、ロシアに侵攻されるチェチェン…そこに留まる一般の人々の生活に
密着したルポルタージュである。

フリーランスのフォト・ジャーナリストやビデオ・ジャーナリストが綴る現地
密着のレポートは、大手メディアでは出来ない取材方法だ。

大手メディアは紛争地や戦場となった国の政治情勢は伝えてくれるが、
そこには故郷を捨てずに生きる人々の生活は欠如している。

日本の外務省が渡航勧告を出している地域でも、根を張り生活を続けて
いる人々がいる。本書は危険と背中合わせで、それでも故郷を捨てぬ
人々をリアルに描いた秀作である。

英雄はひとりもいない。だが、皆が懸命に生きている。例えそれがどんな
理不尽な状況であろうと。

大手メディアにも、こんなフリーランスのジャーナリストたちに発表の
場を提供すればいいのにな…と思う。

尚、本書に収録されたレポートの初出は信濃毎日新聞である。全国紙
とは違う地方紙の力を見た。関東でも購読出来るかな。