愛して批判した

スティーブ・ジョブス氏の死去に伴い、一般ユーザーはもとより各界の
著名人も弔意を表している。

「本当に素晴らしい経営者だった。アップルを時価総額世界一を争う
会社にしたことは、本当に頭が下がる」

経団連・米倉会長の言葉なんだが…。結局は金だけの評価なのか。
創造性とか独創性は評価基準ではないのか。これが日本の経済界の
トップねぇ。ふ〜ん…。

『大森実伝 アメリカと闘った男』(小倉孝保 毎日新聞社)読了。

アメリカ時間2010年3月25日、ロサンゼルスの病院でひとりのジャーナリストが
この世を去った。大森実、毎日新聞の元外報部長である。

アメリカ軍は北ベトナムハンセン病院を爆撃した。ベトナム戦争当時、西側の
記者として初めて北ベトナムを取材した大森が書いた記事がアメリカの癇に障った。

日本生まれで日本人の伴侶を持つ知日家であり、当時の駐日アメリカ大使だった
ライシャワーが行った記者会見で大森は名指しで批判される。

「泥と炎のインドシナ」と題した連載の陣頭指揮を執っていた大森は、ライシャワー
のこの批判が原因となり毎日新聞を退社することになる。

本書は、著者が名指し批判の原因となったハンセン病院への爆撃が本当に
行われたのかの検証の旅から始まり、大森実のジャーナリストとしての軌跡
を追っている。

この検証の旅と、大森が影響を受けたというアメリカ人ジャーナリスト、ニール・
シーハンへのインタビューが興味深い。そして、著者自身が特派員として実際に
体験した湾岸戦争イラク戦争ベトナム戦争と対比させている。

アメリカがベトナムで行ったことは、その後の他国での戦争でも同じことを繰り
返すことの原因となる。

人はイデオロギーのみで戦うのではない。民族の独立を勝ち取る為に戦うのだ。
何度戦争をしたら、アメリカはそれを理解出来るのだろうか。

アメリカはこんなことをしちゃいけない」。ベトナム戦争への大森の思いは、
特派員として、支局長として現実のアメリカと向き合って愛したからこその
批判だった。

しかし大森実という人の持っていた人脈は凄いな。スカルノ大統領にシアヌーク
国王だもんな。自称・国際ジャーナリストのノビー(注:落合信彦)は恥じなさいな。