国は信用出来ない

逆転敗訴である。アメリカからの沖縄返還の際に、日本政府がアメリカと密約を
交わしたことに関する外交文書の開示を求めて沖縄密約訴訟裁判である。

外務省と財務省は文書は存在しないとしたが、一審の裁判長は「国の調査は
信用出来ない」と、国に対して文書の開示と慰謝料の支払いを命じた。

この判決が出た時、なんと勇気ある裁判長なのかと思ったのを覚えている。
だって、「国は信用出来ない」んだよ。すごいよ。

今回の2審でも日本が返還費用の肩代わりをするという密約を認めたものの、
「文書を隠すという意図が働いており、既に廃棄された可能性が高い」との
理由で、提訴していた元新聞記者たちの敗訴となった。

「これまでの政府の主張が認められた」と外務省は喜んでいるらしいが、
国が信用出来ないことには変わりないし、私は1審判決を支持したいね。

まぁ、私が支持しても判決が覆ることはないんだけどさ。ブツブツ…。

『長崎グラバー邸 父子二代』(山口由美 集英社新書)読了。

グラバー邸と言えば長崎県の観光名所である。確か、高校の修学旅行で
行ったのだがあまり真剣に見学しなかったように思う。今、思い返せば
なんてもったいないことをしたのかと感じるんだが。

そのグラバー邸の主であったトーマス・ブレーク・グラバーと、日本人女性
との間に生まれた息子・倉場富三郎の軌跡を追っているのだが…。

グラバーの生地へ行ったりと確かに取材もしているのだが、他の作品から
の引用と著者の想像をメインにして書き上げられたように感じる。

父・グラバーについては少々知識はあるが、息子・富三郎についてはまったく
知らなかった。だから、先の大戦時に敵国との混血児であった彼の立場とか
をもっと書き込んでくれないと分からぬ。

文章中にいきなり「スパイ疑惑」とは書かれても、それを具体的に示してくれ
ないとねぇ。

長崎への原爆投下後、富三郎は自ら命を絶っている。そんな富三郎への
著者の思い入れが感傷となって読む方の邪魔をする。著者をよく四rぬの
だが、「ノンフィクション作家」と言ってはいけないだろう。

グラバー親子については違う本を探した方がいいようだ。