史上空前の作戦

除霊の滝修業で中学生が死亡した。そもそも、除霊ってなんだよ。
椅子に縛り付けて身動き出来なくした所へ、大量の水を浴びせる
のが暴行以外のなんだというのか。

修行って無理矢理させるものじゃないだろう。立派に殺人だと思う
のだけどね。こんなの、宗教でもなんでもねぇよ。

『前へ! 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』(麻生幾 新潮社)
読了。

哀しかったり、切なかったり、嬉しかったり、感動したりで人は泣くのだが、
あまりにも激しい怒りにかられても涙が流れるんだなぁと実感した。

未曾有の災害に対して、多くの機関、多くの人たちが史上空前の作戦に
立ち上がった。自衛隊や消防、警察の活躍は様々なメディアで報道され
たので今更言うまでもないだろう。

本書での注目は国土交通省の外局である東北地方整備局の対応である。

震災発生直後から、今後の人命救助・支援活動の為、緊急車両の通行に
必要な道路の確保に各人が苦闘する。

傘下にある国道事務所・維持事務所、そして災害発生時に協力体制を
敷くことになっている民間企業が一丸となって、余震が続くなか利用出来る
道路の状況確認が行われる。

菅直人海江田万里がどうしようもないなかで、当時の国交相・大畠氏の
「すべて現場に任せる。国の代表として必要と思われることはすべてやれ」
の指示は、やっと国務大臣らしい発言だった。

大規模災害の全容も分からないうちから、対応のあった人たちはそれが
任務であるから「前へ」と進んだ。そして、その足を引っ張ったのは日本
政府と東京電力ってのは本当に腹立たしいよな。

自衛隊に燃料不足の危機が襲う。通常、燃料元売り会社からは直接納品
されるのに燃料元売り各社が供給を止めた。

「官邸の意向」

元売り会社の幹部から帰って来た答えがこれ。被災地への優先供給を考えて
のことらしいのだが、自衛隊への供給まで止めて誰が人命救助・災害支援に
降る活動出来るんだよ。素人でも何が優先順位か分かるってのに。

そして、大たわけ企業の東京電力。機動隊に高圧放水車の貸し出しを依頼
したのはいいが、複雑な操作が必要である為、自社社員では捜査不可能。
「やっぱりそっちでやってね」だと。

電源喪失した福島第一原発に、各電力会社所有の電源車をパトカー先導
で送り込んだら、「高圧電源なので使えません」。そんなもん、送り込む前に
分かるだろう。

こんな企業、もう潰れていいよ。ついでに原子力安全・保安院も解散しろ。

尚、本書は良書ではあるのだが著者の筆が感情に流されている部分が
多い。事実のみを淡々と記してくれた方が、現場の臨場感は伝わると
思うのだけどね。