1000年の果て

ローマ人の物語43 ローマ世界の終焉[下]』(塩野七生 新潮文庫)読了。

誰も気づかないうちに西ローマ帝国が消失したことで、広大な帝国は滅んだ。
最終巻となる本書は、「帝国以降」の推移を追っている。

蛮族の族長により最後の皇帝が退位させられた後、西ゴート族東ゴート族
族長が「イタリア王」を名乗る。蛮族に蹂躙された首都ローマだったが、ふたりの
族長はイタリア統治にローマ人の能力を必要とした。

「パスク・ロマーナ(ローマによる平和)」は遠い昔。帝国消滅以降は、ゴート族に
よる「パスク・バルバリカ(蛮族による平和)」が訪れる。カトリックを正統キリスト教
とした旧帝国で、カトリックとは教理を異にする蛮族との共存の時代だ。

それが破られるのは、既にビザンチン帝国と呼びたい東ローマ帝国が「帝国の
再統合」なんてことを考えたことから壮絶な戦役に突入することとなる。

しかもこの再統合、「広大な帝国の夢をもう一度」というより、異端排除の宗教的
目的だった。蛮族の支配の下で、最後の平和を享受していたローマは、同じ
「ローマ」によって息の根を止められた。

現在のヨーロッパの主要都市の基盤を築き、地中海を内海とし、北アフリカまで
を属州にして、人誰にでも成功の機会があったローマは表舞台から姿を消す。
そして、中世になるとイタリアには小国が乱立する。このイタリアを統合しようと
した男を描いた著者の『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』も再読
したくなった。

尚、ビザンチン帝国となった東ローマ帝国だが、こちらはやはり後にオスマン
トルコのスルタン・モハメッド2世の前に膝を屈する。この時代を描いたのが
同じ著者の『コンスタンティノープルの陥落』である。

ヴェネツィア共和国も1000年の果ての滅亡だった。だた、同じ1000年の果て
でもローマ帝国の滅亡はあまりにも寂し過ぎる。

しかし、カエサル以降もカエサルの登場が多いのは、著者はカエサルを描こう
としてローマ帝国通史を書いてしまったのではないかと思わせるほどだ。

全43巻、これにて無事、読了である。要した日数、2ヵ月少々。トライアヌス円柱
で中だるみした他は、ワクワクしたり、格好いい男に惚れたり、女性の描写に
苦笑したりで楽しく読めた。

そして、読んだ期間、独断と偏見の乾燥にお付き合い頂いた方に感謝である。
さて、本編とは別におまけの1冊があるので、今夜から読み始めようっと♪