誰の為に

時速10㎞。まるで首都高速道路の渋滞のようなのろさで、日本接近中の
台風である。自転車で追い抜けそうだ。

そして戻って来た蒸し暑さ。じとーっとして、まるで常時サウナの中にいる
ようだ。うぅ、不快指数100%に限りなく近いぞ。

あっちでもこっちでも大雨である。今週末にかけて、大きな被害が出ません
ように。

ローマ人の物語30 終わりの始まり[中]』(塩野七生 新潮文庫)を読み
始める。

不運が一挙に押し寄せていたような、アウレリウスの治世である。お気の毒
としか言いようがない。

恒例行事となったパルティア蜂起、蛮族の侵攻と続き、果ては皇帝死去の
誤報によるものとは言え、存命中にシリア属州総督のカシウスが皇帝を
名乗って立つ。

あっちで戦役、こっちで戦役の最中に謀反まで起こってしまうってのは、
帝国の機能不全の片鱗なのか。

さて、ローマ皇帝は現代で言えば最高裁長官のような役割も担っている。
法廷で裁判長を務めるのは首都警察長官なのだが、アウレリウスがその
長官に宛てた書簡が興味深い。

「あなたから送られてきた捜査と尋問の結果を精読しての感じでは、被告
エリウス・ブリスクスは、自らの言動についての最低の制御能力さえも
欠いており、母親を殺・したときも、その行為の善悪に対しての判断力が
なかったと思うしかない。また、狂人を装っていたとも思えない。このような
場合は、罪に問うことはできない。なせなら、狂気とはそれだけで、神々が
人間に下す罰の一つであるからだ。
しかし、判決は無罪でも、それは即、放免ではない。今後とも、厳重な監視の
下で保護される必要がある。しかも、情況によっては鎖つきの保護さえも、
考慮に入れておくべきだろう。これは、彼に与える罰ではない。この人物の
近くにいる他の人々の保護のためであって、判決を下すわれわれは、充分に
起こりうる不慮の事態をも考慮に入れておかねばならないということだ。(後略)」

哲学者でもあるアウレリウスは、紀元2世にこう考えたのか。なるほどな。