燃え尽きた人と慈悲の人

ハリケーン「アイリーン」の上陸で、アメリカは非常事態宣言である。
「アイリーン」、名前だけなら美人そうだな。既に死者も出ているよう
なので、そんな呑気な話じゃないんだけど。

翻ってどこかのお国。未曾有の震災に原発事故が重なって、政府は
機能不全を露呈した。しかも、もうすぐお辞めになる首相が「福島に
がれきの中間処理施設を」なんて言い始めた。

お望み通り「歴史に名の残る首相」になりそうだね、すっから菅よ。
悪い意味で…だけど。

ローマ人の物語26 賢帝の世紀[下]』(塩野七生 新潮文庫)読了。

広大な帝国の巡視を終え、国境防衛の再構築をして首都ローマに
戻ったハドリアヌスだったが、老齢から来る身体の不調とやるべき事を
やり終えたことから来る燃え尽き症候群に襲われる。

身辺の世話をする奴隷に支えられなれば足元もおぼつかなくなった
皇帝は、余生のほとんどを別邸で過ごすようになる。

こんなハドリアヌス帝が後継者に指名した若者は、軍団の指揮を経験
すべきとして送られたドナウ河の前線基地で大量の吐血をした後に
亡くなる。

ハドリアヌスが次に後継者に指名したのは、後に「慈悲深き人」と意味する
「ピウス」の名を冠されることになるアントニヌス・ピウスだ。だが、この後継
指名にはひとつの条件が付け加えれていた。

ハドリアヌス帝が、ゆくゆくは当事者にと考えていた少年二人を、アントニヌス
が養子に迎えることだった。

知性のほとんどを帝国の視察に当てたハドリアヌスの後を継いだアントニヌス、
ローマ皇帝に贈られる「国家の父」を文字通りに体現した、慈悲と秩序の人
だった。

しかし、このアントニヌス、現存する史料がまったくないようで、著者の筆も
相当に鈍りがちだ。でも、次の一文を。

「政治思想家マキアヴェッリによれば、リーダーには次の三条件が不可欠と
なる。「力量」、「好運」、「時代への適合性」である。(中略)トライアヌス
ハドリアヌスと同じく、アントニヌ・ピウスもまた、「質」は違ってもこの三条件
満たしていたのである。統治される側にとっての幸福な時代とは、この三条件
すべてを持ち合わせていながら「質」はちがうリーダーが、次々とバトンタッチ
していくじだいであるのかもしれない。」

三条件なぁ…誰も持ってない気がするけど。某政権党の代表選。ブツブツ。