最終手段

カダフィだけど」

おかしいな。砂漠の狂犬に携帯電話の番号を教えた覚えはないのだが、
声の主はそう名乗った。しかも日本語である。ふむ、大佐は日本語が
出来たのか。

地元駅前の焼鳥屋にいるらしい。おかしいな、テレビのニュースでは
その昔♪ここ〜は地の果てアルジェリア〜♪と歌われた、アルジェリア
逃亡したようだと言われていたはず。

まぁ、ちょっとおかしな友人の話は置いておいて。本物の大佐には、確か
日本円で1億3000万円の懸賞金が掛けられている。どこへ行っちゃった
んだろうねぇ。

ローマ人の物語26 賢帝の世紀[下]』(塩野七生 新潮文庫)を読み始める。

先帝トライアヌスが堅牢にした国境防衛で、帝国の安全保障は確立した。
その帝国を受け継いだハドリアヌスは、自らが広大な帝国を実際に見て
回ることでより一層の防衛強化策を講じる。

この属州視察の旅で、エジプトを訪れた際に悲劇が起こる。皇帝が愛した
美少年アンティノーがナイル川就航中の船から落ちて溺死している。

「しかし、相当な数にのぼるアンティノーの彫像を見ていて感ずるのは、
ゼロとしてもよいほどの知性の欠如である。美しさならば完璧で、そのうえ
まことに官能的だが、知力をうかがわせるものは影さえない。」

これまた辛辣な著者のテンティノー評である。私はここまで深く考えずに
アンティノーの彫像は見ていなかった。「なんと整った顔なのか」としか
感じなかった凡人である。

さて、このアンティノーの溺死。成熟した大人の男になる前にハドリアヌス
愛を永遠に自分に引きつけておこうとした自殺であるとの説を採用している。

愛を獲得する為の、最終手段だな。少々ずるいけど。