至高の人

♪あ〜なた〜に今夜は〜 ワ〜インを振りかけ〜♪

往年のジュリーの名曲を口ずさみながら、フライパンを振る。
今夜の我が旦那のおつまみの一品、あさりのワイン蒸しを作る。

ここからジュリー・メドレーに突入したのだが、ある歌の途中で歌詞が
思い出せなくなった。う〜ん、「ここまで出かかってるのに〜」という
気持ち悪い状態なのだ。

そこで取り出したのはベスト盤CDである。お目当ての曲をかけてすっきり
したついでに、全部聞いてみる。おかげで夕飯の準備に時間が掛ったよ。汗。

ローマ人の物語24 賢帝の世紀[上]』(塩野七生 新潮文庫)読了。

伝記がないのがつくづく残念なトライアヌスである。自ら書いた「ダキア戦記」
でも残っていたらよかったのになぁ。

初の属州出身の皇帝は、属州重視の政策を取るのではないかとの元老院
危惧をよそに、本国重視の姿勢を貫く。妻にさえ「皇后」の尊称を与えることを
せず、親族を重用することもしなかった。あくまでも「公正」を旨とした人だった。

本作品でこれまでも度々取り上げられているローマ帝国のインフラ整備だが、
その徹底ぶりには改めて感心してしまう。橋の基礎作りは現代の工法とほぼ
同じだそうだ。

帝国の領土を拡大し、育英基金を創設し、多くの公共事業をなした皇帝は
元老院から「至高の皇帝」の称号を贈られる。

スペイン属州で生まれ、軍団でその才能を育てたトライアヌスはローマ人以上
にローマ人として生きたのではないだろうか。

「属州出身者としてははじめての皇帝だからと思って、人並み以上にがんばった
のですね」

トライアヌスの心中を憶測しての著者の言葉である。20年の治世の後、
至高の皇帝は病を得、本国へ帰る船旅の途中で息を引き取る。

首都ローマでは彼の遺骨を迎えての凱旋式が執り行われた。