身から出た錆
「歳だから覚えられない」
仕事でこういう言い訳をする人に、我慢がならない。覚えようとする姿勢を、
端から放棄していやしないか?
年齢のせいにする前に、努力はしたのか?本気で覚える気があるのなら、
教えてもらったことはメモでもしておけ。それもせずに何かしら逃げ道を
用意するのなら、それは「卑怯」だ。プンスカッ。
『ローマ人の物語22 危機と克服[中]』(塩野七生 新潮文庫)読了。
ガルバ、オトー、ヴィティリウス。3人の皇帝が次々と倒れた後に立ったのは、
これまでの貴族階級出身ではなく、軍団叩き上げの人ヴェスパシアヌス。
日本流に言えば「平民宰相」というところか。
しかし、打ち続いた内戦で大きな問題が持ち上がる。ユリウス・カエサルが
制覇したガリアで、独立の機運が高まった。
精鋭と言われて来たローマ軍団は、それぞれが皇帝を擁立してばらばら。
しかも、首都ローマでの市街戦でローマの守護神ユピテルの神殿が火災
で焼失。
「なんだよ、ローマ軍団それほど強くないじゃん。守護神の神殿まで燃えちゃっ
て神々にも見放されてるじゃん。よしっ、独立するなら今がチャーンス」
有力部族の長たちは軍団を編成したばかりか、ローマ軍団内部からの
反乱も引き起こす。だが、すべての部族がガリア帝国の夢に参加した
訳ではなかった。
これまで同様、ローマへの忠誠を誓う部族もいた。これが計算違い。
でも、反ローマの部族にも親ローマの部族にも「ユリウス」の家門名を
名乗る人がなんと多いことか。
それもこれも、かのユリウス・カエサルがガリア制覇の際に自分の家門名を
大盤振る舞いした結果だ。あっちもユリウス、こっちもユリウス。カエサル、
なんと太っ腹。読んでいて少々混乱したけどね。笑。
そして、ガリア問題と並ぶのがネロの時代からの課題だったユダヤ問題だ。
内戦での中断はあるものの、結局はローマが勝利を収めるのだがユダヤ人の
描写を読んでいると、聖地を追われたのは自業自得に思えて来た。
さて、ヴェスパシアヌス。治世はおおむね善政で終始している。健全なる
常識を持った人は、この内戦を教訓とし早々に自分の息子を後継者と
して周囲に認めさせる。
「かわいそうなオレ、神になりつつあるようだよ」
これまで大病もなく過ごして来た常識ある皇帝は、死・の床で呟いた。
帝位に就く時に公約した、平和と秩序の再復・維持を実現して。