誠心誠意の人

「今度会うのは○日だねぇ」なんて、隣席のスタッフと話していた。その時、
今月のシフト表を見ていた彼女の顔がふっと曇った。

「ねぇ…○日のシフト、気づいてた?」

ん?なんだ?その日、彼女は公休、私は出勤日。それが何か?えーっと…。
あれ?なんだ、このシフトはっ!?

ワークシェアの新人ふたりに、ベテランだけど仕事の雑な人、そして私。
しかも、問い合わせが立て込む金曜日ではないか。がーーーん。

何かの嫌がらせだろうか。そう思って、つくづくとシフト表を眺めていたら
その前日も似たようなメンバーなのに気づいてしまった。

中番のスタッフが出て来るまで、ひとりで頑張ればいいんでしょうか?
普段、自分の出勤日しか気にしてなかったのが落とし穴だったよ。
シクシク…。

ローマ人の物語19 悪名高き皇帝たち[三]』(塩野七生 新潮文庫)読了。

「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」と思わぬ帝位に就いたクラウディウス
だが、誠心誠意の人は懸命に職務をこなした。

先帝カリグラが何もかもを駄目にしたローマ帝国は、彼の治世で立ち直るのだが、
妻にした女が悪かった。

メッサリーナはこれまでの地味な生活から皇妃となったことで、物欲に目覚める。
人の物まで欲しがった彼女は、国家反逆罪等を乱発して没収した他人の財産を
私物化する。

それだけならまだよっかったが、クラウディウスが首都ローマを留守にしている
隙に、あろうことか他の男と結婚式を挙げる始末。結局はこれが彼女の命取り
となった。百人隊長から自死を勧められたが、その勇気もなく百人隊長が自ら
剣を振るうことになった。

そして、後妻に迎えたのは初代皇帝アウグストゥスの血を引くことでティベリウス
を悩ませたアグリッピーナの娘。母が大アグリッピーナなら、娘は小アグリッピーナ

母同様、アウグストゥスの血にこだわった彼女は待つことを知らなかった母と
違い、着々と自分の連れ子を次の帝位に就けるよう画策する。

ある日、夕食。好物のきのこ料理を口にしたクラウディウスは数時間後に
この世を去る。妻アグリッピーナが毒きのこを食べさせたとの逸話を残して。

歴史家として文筆家として50歳までを過ごし、突然、帝国の最高権力者に
祭り上げられ、それを真面目に務めた人は女の野心の為に命を落とした。
ティベリウスの孤高とは違い、なんと憐れな人だったのか。

クラウディウスの死後、アグリッピーナの野望通り、その連れ子が僅か17歳で
帝位に就く。そう、あのネロである。