土に還る

昨日は迎え盆の為に、午後から実家へ行っていた。「家に着いたら洗濯物を
取り込んでおいて」と母に言われていたので、到着早々に2階へ。

うぅ…むわっとするこの熱気。なんとういう不愉快な暑さだろう。涼しくなる訳でも
ないのに「暑い、暑い」と言いながら、洗濯物を取り込んでいると視界の隅を
かすめたものがあった。

洗濯かごを置くように置かれた台の上にあったのはセミである。それも死骸だ。
合計6匹。ひえぇぇぇ。我が母上はなんでこんなものをコレクションしているのか。

帰宅した母に聞いたところ、ベランダの床で死んでいたので庭に埋めようと
思って拾っておいたのだそうだ。

「生き物は土に還してあげるのが一番だからね」

さすが、秋田の山育ち。でも、実際に猫の額のような実家の庭にセミを埋めた
のは、我が旦那なのだけどね。笑。

ローマ人の物語16 パスク・ロマーナ[下]』(塩野七生 新潮文庫)読了。

政治の世界では着々と成功を遂げたアウグストゥスだったが、彼の狡猾とも
言える慎重さをもってもどうすることも出来ないことがあった。

軍事面での右腕であったアグリッパ亡きあと、それを引き継いだのは妻の
連れ子であったティベリウスドゥルーススの兄弟であった。ふたりの軍事
面での才能は甲乙つけがたいが、初代皇帝が愛したのは弟のドゥルースス

しかし、ドゥルーススは不慮の事故で若くして亡くなる。ならば、兄のティベリウス
かと思いきや、こちらはとっとと引退を宣言してしまう。

孫でありアグリッパの子であるふたりの男子を養子にするも、こちらのふたりも
相次いで世を去ってしまう。そして、娘と孫娘の異性関係の不祥事と、老いた
皇帝を悩ませるネタは尽きない。

カエサルが計画し、アウグストゥスが基礎を固めた「パスク・ロマーナ」は
達成された。だが、己の血の継承にこだわった初代皇帝は後継者選びで
悲哀と苦悩を滲ませる。

結局は引退していたティベリウスが現場復帰を果たし、後継者としての指名を
受けることになるのだが、「アグリッパが存命であったのなら…」と考えずには
いられない。

晩年、なんでも相談出来たはずの人材を欠いた初代皇帝は、77歳を目前に
世を去る。パスク・ロマーナを盤石にする仕事を、2代目のティベリウスに託して。