戦争の記憶

広島原爆の日である。祈念式典の模様をテレビで見ていた。若干の違和感を
受けたのは広島市長の平和宣言と、被爆者から「来なくてもいい」と言われ
ながらも出席したすっから菅首相の挨拶だ。

同じ核だから…なのかもしれぬが、共に国のエネルギー政策に関したことが
盛り込まれていた。

後日行われる長崎でもそうだが、祈念式典は戦没者への慰霊と平和への
祈りを捧げる式典ではなかったか。その席でエネルギー政策の話ってのは
いいものなのか。なんか違うと感じたのは少数派か。

さて、広島原爆の日にもうひとつの戦争の記憶である。成田空港内にある
反対派の団結小屋が、反対派のシュプレヒコールを浴びながら強制撤去
された。

農地を守る為に、農民が国と戦った戦争の記憶を留める建物だ。三里塚闘争
は、今でも終わっていない。

ローマ人の物語12 ユリウス・カエサル ルビコン以降[中]』(塩野七生
 新潮文庫)を読み始める。

留守にするローマを任せたアントニウスの失政の後始末をし、従軍拒否を表明
した古参兵を戦線復帰させ、アフリカで再結集したポンペイウス派を制圧し、
サルディーニャとコルフを視察して、やっと凱旋式を挙げることに漕ぎ着けた
カエサルである。

4回に渡って行われた豪華な凱旋式。凱旋将軍であるカエサルの後には
ゲルマン民族の出身の騎兵が続く。そして、騎兵団の後に名だたるローマ
軍団兵たちだ。全員が剣と槍を持っての堂々たる軍装姿。

しかし、彼らが大声で唱和したシュプレヒコールは…。

「市民たちよ、女房を隠せ。禿の女ららしのお出ましだ!」

額の後退著しい最高司令官の威光も台無しである。まぁ、この司令官にしてこの
部下ありってところなのか。

尚、元老院凱旋式にのみ許されていた月桂冠の着用を、カエサルにだけは
それ以外の場所でも着用を許した。