賽は投げられた

ローマ人の物語10 ユリウス・カエサル ルビコン以前[下]』(塩野七生 新潮文庫
読了。

共同歩調は苦手という、まるで後世のジェノヴァ人のようなガリア人。ローマの支配下
に入るのは嫌だけど、各部族がこぞってカエサルに対することはなかった。それが、
ひとりの青年の活躍の元、ガリアは反ローマとして立つ。

さすがのカエサルも手こずる相手だが、配下の兵士を鼓舞する人身操作術に長けた
カエサル。窮地に遭っても兵士の戦闘力を見事に引き出す。そして、運も彼に味方
する。唯一と言ってもいいガリア総動員の反ローマの戦いも、結局はカエサル
勝利に終わる。

その頃、ローマでは民衆派に移行しようとするカエサルの政治的動きを危険視
した元老院派によって、戦勲を上げたカエサルは政体を脅かす者とされ巧妙な
排除の計画が立てられる。

元老院最終勧告」という名の非常事態宣言が出され、カエサル国賊とされる。
共に戦って来た軍団まで元老院によって取り上げられようとしている。その部下
たちに向かって、カエサルは話す。

カエサル派が不正に彼を貶めようとしていること、元老院は平民の代表である
護民官の権利を侵害したこと。そして、ガリアを制覇し、ゲルマン民族の侵攻を
食い止め、ローマに多大な貢献をした彼らの最高司令官の名誉と尊厳を守って
くれるようにと。

「最高司令官と護民官が受けた侮辱を晴らすためには、カエサルの行くところ
どことなりとも従う用意あり」

兵士たちはカエサルと共に国賊となる道を選んだ。だが、長年カエサルの下で
戦い、彼の右腕といってもいい副将ラビエヌスだけは敵対することになるポン
ペイウスの下に向かう。

ポンペイウス元老院派が期待したようなカエサルの兵士たちの切り崩しも
せず、息子と従者だけを連れ、荷物さえも置き去りにして。

大地主ポンペイウスの領地出身のラビエヌスは、代々、保護者と被保護者の
関係にあった。

うぅ…なんか格好いいじゃん。ラビエヌス。