空へ

直木賞芥川賞が発表になったのだが、芥川賞は該当者なし。
ふむ…日本の純文学は衰退の一途か。

そんなことを言っている私も、受賞作を読まなくなって久しい。
以前は文学賞受賞作品は軒並み読んでいたのになぁ。

そもそも小説に食指が動かなくなってるものな。今の私の興味と
勉強の方向としては益々小説離れしそうだ。汗。

ブルーインパルス 大空を駆けるサムライたち』(武田頼政 文藝春秋
読了。

ブルーインパルスの誕生前夜から、これまでの事故の検証をしながら
航空自衛隊パイロットたちの人間群像を描いた力作である。

ブルーインパルスが遭遇した事故の検証だけなら、非常につまらぬもの
になっただろうが、そこに関係者の人生を加えたことで人間味のある読み
物に仕上がっている。

特に浜松での航空祭の墜落事故の考察は、組織としての責任の所在を
考えさせられる。隊長の命令に従って墜落事故を起こしたパイロットにも
過失があるのか。

上官の命令は絶対。しかし、命に関わることであれば自己判断。相矛盾する
ふたつの要求の間で、どちらを得選ぶべきなのか。

著者は事故関係者が定年退職をするまで待って、本書の取材を始めた。
元航空専門誌の記者だけに、これは関係者に対する心配りか。戦闘機
乗りたちに対する著者の愛情が行間に溢れている。

今日も日本の領空のどこかで、観客を楽しませる為の曲技の訓練をして
いるパイロットがいる。他国機の侵入に対してスクランブル発進している
パイロットがいる。救難隊はより厳しい環境を設定して救助訓練を行って
いる。

現在のブルーインパルスのことを詳しく知りたいと思う向きには物足りない
かも知れぬが、自衛隊を知らぬ人にもお勧め出来る1冊である。