体内の時限爆弾

日本のスーパーコンピュータが世界第一位になった。久し振りの明るい
ニュースだなぁ。いいことだ。

一昨年の事業仕分けで「世界一になる意味はあるんですか?2位じゃ
ダメなんですか?」と仕分けを仕切った女性議員に言われてたっけ。

その民主党の女性議員、今回の世界第一を受けて「2位じゃ…」の
発言を「マスコミの捏造」と言い始めた。

もしもし?確かこの発言をネタにした本まで出してませんでしたか?
寝言は寝て言うものだぞ。どうしてこう言い訳ばっかりしますかねぇ、
民主党のセンセイたちは。

ついでだからこの人に「スーパー堤防はやっぱり不要ですか?」って
聞いてみたいもんだ。

『石の肺 ─僕のアスベスト履歴書─』(佐伯一麦 新潮文庫)読了。

作家を目指しながら電気工として働いた著者が、多くの現場で浴びた
アスベストによって自身の肺が侵されていく過程を克明に描いている。

実体験を元にしたルポルタージュなので、体調不良を自覚して行く過程は
説得力がありじわじわと怖い。

危険性が指摘されながらも、高度経済成長期に建造物の断熱材として
なんの規制も受けずに使用されて来たアスベストは、20年、30年という
長い期間を経て人体に取り返しのつかない悪影響を顕在化させる。

原爆症訴訟や水俣病訴訟に通じる、国の責任は明確だ。建築・建設現場で
働く人たちのみならず、その作業着を洗濯した連れ合いまでもがアスベスト
によって肺を侵されている。

法律によってアスベスト曝露を受けた人たちは救済されるようになったが、
末端の労働者すべてを建設会社が把握している訳ではないだろう。原因
不明の肺の病で既に亡くなった方もいるはずだ。

奇しくも昨日、福島原発で作業にあたった方のうち69人が所在不明との
報道がなされた。アスベストの被害を受けた方にも、こういった人たちが
多くいるのではないだろうか。