汚れっちまった悲しみに

慎太郎は諦められないようだ。オリンピックの東京招致に再度、挑戦する
らしい。「被災者を励ます為に」とか言ってたけど、自分の意地だけでやって
るだろう。被災者をダシに使うな。

招致PRに消費される莫大な税金、他に使い道があるんじゃないか?

原発ジプシー 被曝下請け労働者の記録【増補改訂版】』(堀江邦夫
 現代書館)読了。

期待を裏切らない復刊だった。原発内で働く労働者(電力会社社員では
ない)が直面する劣悪な環境が、日記形式で克明に綴られている。

手配師によって全国から駆り集められる底辺の労働者たちは、十分な
安全教育・放射能知識も授けられず定期点検の行われる原発構内に
送り込まれる。

作業の妨げになるからと、被曝線量は根拠もなく引き揚げられる、被曝量を
量る機械は交渉がち。作業中の事故や怪我は巧妙に隠され、労災さえも
認められない。

廃棄物処理は請負にして欲しい」

電力会社社員の言葉が端的に表しているように、電力会社が前面に押し出して
いる安全性は社員の安全性であって、下請け・孫請けの労働者は使い捨てだ。

現在、福島原発で事故終息の作業に当たっている多くの作業員同様、放射線
被曝と背中合わせの危険な作業に従事している彼らがいてこそ、原発は動いて
いるだということを原発推進者は隠し続けて来たのではないか。

福島原発の作業工程に「放射線管理と健康」が追加されたとの報道があった。
それも事故から3カ月を経過してからである。いままでどれだけ、現場の安全
をないがしろにして来たかが分かるではないか。

この福島原発事故では線量計の不足云々も報道されたが、先日の東京電力
会見を聞いて唖然とした。5000台あった線量計津波で流され300数十台に
なったことを「若干の不足」と表現していた。10分の1以下を「若干」とは言わない
だろう。ここにも電力会社の驕りが見える。

樋口健二『闇に消される原発被曝者』も被曝した労働者を追った秀逸な作品
であったが、本書も潜入ルポルタージュとして私が名作だと思っている鎌田慧
自動車絶望工場』に匹敵する力作である。

原発稼働から被曝による労災認定を得た人は、わずかに10人。テレビの報道
バラエティでもよく取り上げられるようだが、この数字自体がおかしいだろう。

放射線による人体への影響は解明されている訳ではない。どんな影響が出る
かも分かっていないのだから、電力各社はこれまで原発で作業に従事した
労働者の追跡調査をするべきではないのか。

本書が発行された時の反響が「文庫版あとがき」として収録されている。そして、
今回の復刊に際しての「あとがき」が新たに追加された。実際に原発内で働い
た著者による、貴重な体験を収録した◎な良書である。