恋して、愛して、墜ちて行った

G20開催で大阪が交通規制などで大変なことになっている
ようだが、それに先立つフランス・マクロン大統領の来日
で東京で行われた安倍晋三改め安倍捏造との記者会見は
面白かったぞ。

いつものように原稿を棒読みしている安倍捏造の手元を、
マクロン大統領が怪訝そうに見ていた。テレビ各局の報道
はこういうところをきちんと流して欲しいわ。

『千年の夢──文人たちの愛と死 上巻』(齋藤なずな 
小学館文庫)読了。

漫画雑誌「ビッグゴールド」に「恋愛列伝」のタイトルで
連載されていた作品の文庫化。

サブ・タイトルの通りに、明治以降の文人たちの愛と死を
資料に基づきながらも作者独自の視線で描いている。

上巻には9話お収録。冒頭は与謝野鉄幹を巡って恋と短歌の
ライバルである与謝野晶子と山川登美子を描いた「月明」。

現実のふたりの間には漫画に描かれる以上のどろどろと
した葛藤があるのだろうが、友情を超越した女性同士の
気持ちの揺れが切なく表現されている。

「智恵子は東京に空が無いといふ。」で始まる、高村光太郎
「あどけない話」。「レモン哀歌」と並んで有名な作品でもある。
昔々、この「あどけない話」に光太郎・智恵子夫妻の愛を感じた
のだが、もしかしたらこの頃から智恵子さんはSOSを発していた
のかもしれない。

愛した妻が心を病んで手の届かないところへ行ってしまうのだ
けれど、智恵子さんの心の意見のひとつの原因になったのは
孝太郎その人自身ではなかったのかとの見方を暗示するような
「二つの空」は、作者の智恵子さんへの思い入れを感じる。

孝太郎と一緒になっても生活の心配をせず、好きだった絵に
打ち込むことが出来たのなら、智恵子さんは心を病むことも
なく済んだのかもしれないと思わせる。

流浪の歌人種田山頭火を題材にした「青い山」では、山頭火
奥様であった咲野さんからの視点で描かれているのが新鮮。

林芙美子の男運の酷さには泣けてくるし、美への昇華を詩に集約
した萩原朔太郎のダメっぷりには呆れるほど。

そして、アクターこと芥川龍之介を描いた「東方のイカルス」で
はアクターが幼いころから抱えていた母性を知らないという宿痾
が凝縮されている。

女性の書き手だけに、女性よりの視点で描かれる文人たちの生涯
と愛の物語は新鮮でもある。