恐怖と絶望の日々から立ち上がる

アメリカのトランプ大統領が我が国の首相並みにダメダメなの
は分かっている。

分かっていたけどさ、7歳の子供に「まだサンタクロースを
信じている?」って…。それ、言ったらダメな奴ですから〜。

『THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、闘い続ける女性
の物語』(ナディア・ムラド/ジェナ・クラジェスキ 東洋館
出版社)読了。

イラク北部のヤズィディ教徒のコミュニティで、少女は育った。
裕福ではないが、大家族や親族、多くの友人・知人に囲まれ、
将来はヘアサロンを開くことを思い描いて。

宗教的マイノリティであるけれど、近隣のムスリムたちとも
友好的な関係を保ちながらの幸福な暮らしが崩壊してしまう
などとは露とも思わずに。

イスラム国の侵攻が彼女からすべてを奪った。家族も、友人も、
将来の夢も。

大人の男性、老人、年老いた女性は殺害され、妙齢の女性たちは
イスラム国の戦闘員の性奴隷として連れ去られた。

コミュティが破壊され、自身も性暴力の被害者となった著者で
あるナディアの体験記は、ただ宗教的マイノリティの叫びでは
ない。過去の戦争、そして現在も行われている戦争・紛争で
心と体に深い傷を負った人々すべての叫びだ。

「性奴隷」という刺激的な言葉だけに注目してはいけない。
性暴力を含むすべての暴力に対して、私たちは「No!」と
声を上げなければならない。イスラム国の手から逃れた
後に、ナディアが声を上げたように。

自身の性的暴行の体験を公の場で語ることは、恐怖や絶望を
追体験することに他ならない。語りながらあの絶望の日々が
脳裏に甦るだろう。

それでも、彼女は立ち上がった。イスラム国の戦争犯罪を明らか
にする為に。残酷な体験をするのは自分で最後にして欲しいと
願って。

ヘアサロンを開くことを夢見た少女は、想像を絶する体験を経た
のちに人権活動家となり、2018年のノーベル平和賞を受賞した。

邦人を含む外国人ジャーナリストの殺害、歴史的建造物の破壊
など。イスラム国が行った卑劣は行為は日本でも報道された。
しかし、イスラム国が支配する地域内部で何が起きていたのか
の詳細な報道はなかった。

正直、本書の内容は読んでいて辛い。そうして、読んだからと
いって私に何かが出来る訳でもない。それでも、知り、関心を
持つことは出来る。

イスラム国ばかりではない。ナイジェリアに拠点を持つボコハラム
も、多くの少女を拉致している。救出された少女たちも過酷な日々
を送っているという。

すべての戦争・紛争で犠牲になった人々に思いを馳せる為にも、
多くの人に読んで欲しいと思う。そして、関心を持続させること
で何か変わるかもしれないとの希望を持ちたい。