美味しい饅頭ですが、食べられません

ん?アメリカがトランプ政権になって初の国賓がフランスの
マクロン大統領だって?じゃあ、今までのうちの安倍晋三って
どんな待遇で訪米してたんだ?

マクロン大統領の宿泊先は迎賓館だそうだ。安倍晋三は…えっと、
トランプ大統領の別荘だったか。

日本で言うところの公式実務訪問賓客か?アメリカでなんか実務を
してたっけ?一緒にゴルフをしてただけのような…。

『万骨伝 饅頭本で読むあの人この人』(出久根達郎 ちくま文庫
読了。

著者の本業は古本屋さん。この方のエッセイを読むたびに、古本屋さん
というのは好奇心旺盛で、勉強家で、博識でなければ出来ない商売なの
だろうなと感じる。

死後、故人を偲んで私家版や非売品として配られる追悼本。葬式饅頭
になぞらえれて、古本業界ではこれを「饅頭本」と呼ぶそうだ。そして、
葬式饅頭のように「おいしい」のだ。

ゆかりのあるある著名人が本名で追悼文を寄せていたりすると言うのだ
から、筆名だけではなくその人の本名までを知っていなくては掘り出し
ものは見つからない。

それだけではない。時の流れの中で埋もれてしまった人々の足跡を
知ることが出来る貴重な資料でもある。

本書は雑誌「歴史読本」に連載された作品に加筆し、饅頭本や自伝から
50人の人生を追っている。

本書で初めて知った人物も多いが、50人の誰もがとても魅力的だ。

大正時代から昭和初期まで「説教強盗」として帝都を恐怖に陥れた
妻木松吉が平成元年まで存命だったなんて。

勝海種の息子・梅太郎と結婚したクララ・ホイットニーの章を読むと、
海舟の奥様・たみさんに興味を引かれる。たみさんのことが書かれた
作品はないかな?知っている方がいたら教えて頂きたい。

俳人であり、数学教師であった数藤五城の章は感動さえ覚えた。旧制
一高で数学を教えていた数藤先生。生徒たちが理解出来なければ先生
は何度でも同じところを丁寧に説明する。だが、生徒たちはわかりま
せんを繰り返す。

「あなたたちが腑に落ちるまで、私は何度だって説明する、ですから、
わかりません、という言葉だけはやめて下さい」と訴えた。

そして学年の終了時。

「まことにふつつかな授業で、皆さんには申し訳ないことをした」。
先生は丁寧に挨拶をして教室を後にした。

あぁ…こんな先生だったら、私は今より少し数学が好きになっていた
かもしれない。あ…数字を見ただけで脳が拒絶反応を示すから無理か。

エッセイであり、歴史読み物でもあり、古本屋さんの世界を垣間見せて
くれる良書。

尚、新聞「日本」の発行人であった陸羯南(くがかつなん)は千葉県
市川市八幡の禁足地「八幡の藪知らず」に入って、無事に出て来たら
しい。ただし、出て来たところで警察官と揉めて拘束されちゃっている
けどね。

あそこ、入ったら出て来れないと言われているが、ちゃんと出て来られる
のだね。