地球の果ての精霊の祭り

じ、事件だっ!フローレンス・ナイチンゲール記章授与式に
雅子妃殿下がご出席だっ!14年振りである。

やっと自分が皇后になるのだとの自覚が出て来たのでしょうか。
それとも、夏のご静養の為のアリバイ公務でしょうか。

おかげで、私の紀子妃殿下と信子妃殿下のお姿がニュースで
流れる時間が少なかったわ。信子妃殿下のお召し物をよく見た
かったのに。残念。

『ハイン 地の果ての祭典 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの
生と死』(アン・チャップマン 評論社)読了。

既にカバー写真が強烈な印象を与える。円谷プロの特撮作品に
出てくる怪獣かと思った。しかし、これはある人々が行っていた
祭典に登場する政令なのである。

先祖は氷河期にその島々に辿り着き、定住した。南米最南端の
フエゴ諸島。平均気温は夏で約10℃、真冬は約1.5℃だが最低
気温はマイナス20℃という極寒の地だ。南極大陸までは1000km
もない。

人類が辿り着いた最南端の島々ではいくつかの部族が地域分け
をして暮らしていたが、19世紀には白人の入植によって疫病の
流行や虐殺によって多くのネイティブが殺害され、ある者たちは
見世物としてヨーロッパへ連れ去れ、ネイティブの人数は激変
する。

しかし、ネイティブたちの祭典を目撃し、失われゆく文化を記録に
残そうとしたのも、また白人なのだ。本書ではドイツ人の人類学者
が書き残した記録と、僅かに生き残ったネイティブの末裔と著者が
親交を深めたことで、彼らの祭典「ハイン」を紙上に再現している。

精霊の扮装をした男たちや、女性が裸体に施しているペインティン
グが素晴らしい。文明社会ではない。染料は自然界にあるものだし、
様々な文様を描くのも手や棒である。

豊富な写真と共に文章で「ハイン」と呼ばれる祭典の様子が紹介さ
れてるのが生き生きしていて楽しそうでもある。

彼らに伝わる神話時代の話から誕生したであろう祭典は、宗教儀式
であり、演劇であり、部族最大の娯楽でもあったようだ。

もう、本書の素晴らしさは私の拙い文章では表現できない。ただ言える
のは、文明社会ではないから文化を持っていないだとか、文明社会の
方が高度な社会生活だとは思ってはいけないということだ。

生憎と本書掲載の写真はモノクロなのだが、「ハイン」の精霊たちの
扮装に用いられるボディペインティングは赤・白・黒の3色のみなのに、
美的センスの高さを感じさせるのだ。

写真だけでも、否、インターネットで画像検索するだけでもいい。多くの
人に知って欲しいと思った。長く長く受け継がれていた祭典があった。
今ではネイティブたちもほぼいなくなってしまったが、彼ら・彼女らは
物こそ持たなかったけれど、精神的にとても豊かな暮らしをしていた
のだと。